#009 ('03/11/28)
ファインベルクバウ(Feinwerkbau)のこと

競技用エア・ライフルといえばファインベルクバウといわれるぐらい、世界中の射手に知られているファインベルクバウとはどんな会社なのか、当社との長い付き合いも含めてご紹介します。

ファインベルク バウ社前で


 ドイツの南西部の都市、シュツットガルトから電車で1時間半ほど南に行った、オベンドルフという小さな町にファインベルクバウ社はあります。本社工場の前にはライン河の支流ネッカー川が流れ、黒い森と言われるシュヴァルトバルトに近く、静かで、澄んだ空気の、精密機械を作るのには理想的立地条件のところです。またオベンドルフはかの有名なモーゼル社やヘッケラー&コッホ社の在地としても銃器ファンには良く知られたところです。


 




朝夕のみ電車が止まるオベンドルフ駅

ファインベルクバウ社の正式名は、Feinwerkbau Westinger & Altenburger GmbH & Co. KG (ファインベルクバウ、ウェスティンガー&アルテンバーガー社)といいその名の通り、ウェスティンガー氏とアルテンバーガー氏による精密機械会社とでも訳せばいいでしょうか。両氏はともにモーゼル社の技師でしたが、ドイツの敗戦で銃器の生産が全て禁止されたため失職しました。そこで1945年ファインベルグバウ社を起こしその技術力でオリンピア社に納入する計算機やタイプライターの生産をしていました。その後銃器の生産が解禁されると、もともと銃器技師だった2人は直ちに銃の生産に取り掛かり、特にエア・ライフルの開発に力を注ぎました。その第1号は1961年に誕生したサイドレバー式有反動スプリング銃・モデル110でしたが、有反動式銃は競技用に不向きなことが判り、直ちに改良を加えて、モデル150と言う画期的な銃身後退式無反動スプリング銃の開発に成功しました。モデル150はその優れた性能と故障知らずの耐久性とでたちまちドイツの射撃界を制覇し、さらにヨーロッパから全世界へと広まりファインベルクバウの名 が世界中の射手に知られるようになりました。


アルテンバーガー氏と FWB 会議室

当時ドイツで新型の競技用エア・ライフルが出現したとの情報を得て、ライフル射撃専門店を標榜する当社としてはすぐさまファインベルクバウ社にコンタクトし、1964年(昭和39年)にモデル150を初めて一丁輸入したのが、そもそもファインベルクバウとの歴史の始まりです。 実際に実物を手に取りその機構や操作性の優秀さに圧倒され直ちにファインベルクバウ社と総代理店契約を結びました。日本の射手の評価も高く、翌1965年にはモデル150を103丁、1966年には312丁、1967年に232丁と順調に販売実績を積み重ねてきました。 以後ファインベルクバウ社はスプリング式モデル300、300S、ポンプ式M600、M601、M602、M603、圧縮CO2式C60、C62、圧縮空気式P70と次々に新製品を開発し、当社でも毎年数百丁を輸入してきております。 現在の最新モデルは圧縮空気式M700で、このモデルも常に競技用エア・ライフルのリーディング・カンパニーとしてのファインベルクバウ社の新技術が凝縮されております。 


来年(2004年)でファインベルクバウ社と取引を始めて40年になります。 ファインベルクバウ社、当社共に次の世代に引き継がれておりますが、創立世代の銃に対する姿勢を引き継ぎ、ビジネス・パートナーとして良好な関係を維持しております。


 ファインベルクバウ社はドイツ工業の良き伝統を守り、生産管理、製造工程において、品質低下を招くような無理な増産は決してせず、あくまでも自社の管理が行き届く生産量を維持しています。このことが時々納期に影響を及ぼしユーザーにご不便をおかけする一因にもなりますが、ドイツ人気質とでもいえるのでしょうか、絶対にこの点は妥協しません。さらに90%以上の部品は全て自社工場で素材から加工し、金型、工具、治具等も自社製作し、外注任せでは行き届かない品質管理に万全を期しております。例えば圧縮エア・シリンダーはアルミの丸棒をくり貫いて製造しているため、強度と耐久性が高い製品に仕上がります。圧力テストも自社で行っております。その他、ねじ、パッキンなどにいたる小さな部品類もほとんど自社で製造しております。これらの一つ一つのパーツに番号があるわけですが、それは9桁、10桁の数字で表されており、一字間違えるととんでもないパーツが入ってきてしまいます。 これはお客様にご迷惑をお掛けすることになり、修理担当と輸入担当泣かせであります。パーツの発注には細心の注意を払いながら、在庫の充実を心掛けております。ドイツの銃メーカーからは、パーツを良く輸入する会社は信用ができると言う言葉を聞きます。


中世のたたずまいが残る
ニュールンベルグの街中

一方、当社では銃のアフターケアーに設立当初より力を入れ、修理技術の向上、パーツ類の在庫管理に日々努力しております。毎年3月ニュールンベルグで催される世界中の銃器メーカーが集まる国際銃器見本市、IWAにスタッフを毎回派遣し、その後オベンドルフまで足を伸ばしファインベルクバウ社の工場を訪れ、同社専門技術者の指導のもと、修理に関する研修を受け、常に最新の情報と技術を習得しております。現在当社では毎月20丁ほどの銃をオーバーホールしておりますが、すべてファインベルクバウ社で得た最新技術を反映させております。

 

 

 






オベンドルフの宿屋バッサーフォール



このように常に最高の技術を追求し、同時に古いものを大切にするファインベルクバウの精神は、私たちがファインベルクバウ社に信頼を置く最大の理由です。


これからもドイツ人の銃に対する真摯な態度を見習い、日本のライフル射撃愛好者のご期待に沿うよう一層の努力をしたいと考えております。



 
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