#020('04/05/03)
ブライカー社訪問記

2004年のIWA報告や訪問記を書き終え、ようやく一息付いていた時に「去年なら面白いコラムが書けたのに、今年は残念だなっ!」との思いに耽っていました。何故なら2003年3月のIWA後は、スイスにあるブライカー社を訪問していたからです。

先日、ブライカー社から「2丁のチャレンジャーライフルを出荷した」との連絡があり、やっとブライカー・チャレンジャーライフルの詳細を報告できる!…と思いながら頭の中で、構成を考えていたところ、「そうだ!ブライカーライフルの詳細報告をレポートする前に1年遅れでもいいから、覚えている限りの事をブライカー社訪問記としてコラムを書いてみよう」と一念発起し、遅ればせながらこのコラムを書く事にしました。

ブライカー社のスモールボアライフル アクション

当社がブライカー社の名前を知ったのは、2002年フィンランドのラハティ市で行われた世界選手権直後の事です。
この大会の300m部門に出場した日本人選手から「スイスのブライカーというライフルを、是非調べて欲しい」との依頼を受けたのがキッカケでした。この依頼の理由は、300mに出場していたスイスチームの選手全員が、ブライカーライフルを使用し輝かしい成績で優勝していたからだ、と言う事でした。
その直後、スイスのヘンメリー社から送られてきた荷物の中にたまたま、スイス射撃協会の機関誌が入っていました。何気なくページをめくっていくと、なんとそこには「全く新しいシステムのスモールボアライフル」として、ブライカー・チャレンジャーライフルが紹介されていました。そこにホームページアドレスが載っていたので、当店はやっとコンタクトの糸口が見出せた次第です。

今までのスイス製ライフルと言えば大昔ならヘンメリー、一昔前ならターナーやグリュンネルを思い浮かべる人多いと思いますが、これからは間違いなくブライカーの時代が到来することと思います。
そんな思いでブライカー社とコンタクトを取り、輸入を開始しようとしていました。

当店の社長がアメリカのショットショーに行った際、「ブライカーさんが来ていて、今度のIWAの後にブライカー社まで行く約束をしたから、行き方調べておくように。場所は大きな湖の南だって」との国際電話がありました。
いざ調べてみるとブライカー社のあるブッチュビルなんて町は、トーマスクックのヨーロッパ鉄道時刻表には乗っていません。SBB(スイス鉄道)のホームページにもありません。なんとかドイツ・ヤフーの検索サイトで《ブッチュビル町役場》のホームページを見つけ出し、ようやく場所を特定できました。
DB(ドイツ鉄道)のホームページで列車の運行表を検索すると、なんとIWAの行われるニュルンベルグからは7時間もの長旅になるのです。
まっすぐ南下するとライン川の源ボーデン湖があり、フェリーに乗って湖を横切るという手もあったのですが、風でフェリーが欠航になったり、電車への乗り継ぎに間に合わなかったらいけないので、あえて鉄道でボーデン湖を迂回してオーストリア経由で、スイス入りするルートを選択しました。
途中電車を四回も乗り継ぎドイツからオーストリアに列車が入ると、拳銃や自動小銃をぶる提げた国境警備隊?の人達がパス・コントローレ(パスポートコントロール)と大きな掛け声とともに車両に入って来ます。そして乗客全員のパスポートをにこりともせずにチェックしていきます。何も悪い事はしていないのですが、この時ばかりはいつも緊張します。やっとの思いで途中宿泊地のビル駅まで到着。いよいよ翌日はブライカー社訪問です。

ブッチュビル駅

ブッチュビル駅に到着するとブライカーさんが、駅まで車で迎えに来てくれました。
早速工場見学です。十年ほど前から始めた銃の仕事は、まだ半分くらいの割合で、残りの半分は会社設立以来から行っている精密機械加工だそうです。
ブライカー社のスタッフは10名で、その中には2002年ISSFのシューターズ・オブ・イヤーに選ばれた、マーセル・ベルゲさんもいます。
ブライカーさんが銃を作り始めたきっかけは、「自分が使っている銃で納得して使える銃が無かったから、自分で銃を作り始めた」などと色々な話しを聞きながら、あわせてチャレンジャーライフルや大口径ライフルの説明を受けました。

ブライカー社

ブライカーさんが「マーセル・ベルゲと一緒にシューティングレンジまで行こう」というので付いて行くとそこは今、廃墟となっている工場の長い通路に一台のポリトロニクス(電子標的)とマシンレストが置いてあるだけの所でした。マシンレストにベルゲさんの銃をストックごとセットして10発ほど弾出しした後、アルティメイトで簡単に10ショットターゲットを作ってくれました。
実はテストターゲットという物は、一回でいいなかなか物はできません。
新品の銃を出荷する際には何回も繰り返し撃って、いいものを一つだけ選びテストターゲットにします。
そこを我々が立ち会いのもと、一発勝負で10ショットターゲット作るというのは、余程の自信がない限り作れないものだと思います。それも銃身をマシンレストにくわえるのではなく、ストックごと銃をマシンレストにセットして10ショットターゲットを作るのですから。

ブライカー社 テストターゲット

この後ブライカーさんは、車で30分ほどの冬山までドライブに連れていってくれました。
ブライカー社のホームページに出ている、あの美しい連山の一つチェーゼルッグ(間違っていたらごめんなさい)という標高2262mの山です。この連山は切り立った断崖絶壁が、見事に綺麗に並んでいます。地表の断層面が隆起して出来た山だと言う事は、ひと目でわかります。日本語の喩えで言えば「鋸山」ですね。
スキーヤーと一緒にゴンドラで頂上まで登ると、そこはまた絶景です。ブライカーさんの話によるとドイツ・イタリア・リヒテンシュタイン・オーストリアにまたがるチロル地方が一望できるそうです。私たちが頂上で見た景色は、白一色の白銀の世界でした。
この頂上のレストランでブライカーさんに、ランチをご馳走になりました。
ご馳走になったのは、ナポリには無い「ナポリタンスパゲティー」です。日本での物とはまったくイメージが異なり、トマトソースがけといったところでしょうか。ただしお味は、かなり塩辛かったのを今でも鮮明に覚えています。
山の麓は別荘の並ぶスキーリゾート地だそうです。

チェーゼルッグ

ブライカー社は銃の製造販売をしているだけでなく、ガンショップも経営しています。当店と同じ競技用ライフル用品の専門店で、我々にも馴染みの商品がたくさんショールームに飾ってありました。ファインベルクバウなどエアライフルも修理します。
ブライカーライフルは、もともと「自分で使っている銃に納得出来ずに、最初はトリガーを自作。その後イロイロやっているうちに、自分で自分の納得のいく銃を作ってしまった」と言うブライカーさんのこだわりの銃なのです。
ブライカー社の入り口には、世界選手権での3個の金メダルが誇らしげに飾ってありました。

鋸山

ブッチュビルという町は、いままで訪れた町の中では一番閑静ないい町でした。 
また機会があれば、ぜひ訪れてみたい町の一つになりました。



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