MECフリーサイト
MECファンの方達からは「まだ入りませんか?」と多くのお問い合わせを頂いていた、MEC社製のリアサイト「フリーサイト」が入荷しましたので、ご報告いたします。
毎年3月に、ドイツのニュルンベルグで行われるガンショー、IWA2004では「フリーサイト」のプロトタイプを見てはいましたが、実際に手に取って触れてみると、見るだけとは大違いです。コンパクトな作りでありながら185gもの重量感があり、マイク・エックハルト氏の「フリーサイト」に対する意気込みと、創り込み凄さを実感する事ができました。
「フリーサイト」に付いていたマニュアルを読んでみると、どうもお客様へ「はい、どうぞ。買って使って下さい。」と言うわけには行かないことに気が付きましたので、マニュアルの要点を私の個人的感想を交えながら、簡単ではございますがご報告させて頂きたいと思います。
「フリーサイト」は今までのサイトとは大きく違い、プラスチック部品を一切使っていません。アルミとステンレススチールから作られていますので、長期の使用にもガタの出にくい構造になっており、とてもコンパクトに作られています。
「フリーサイト」本体にあたる外側表面は、サイト内部のメカニズムを保護するカプセルの役目も果たしています。通常のリアサイトですと露出しているネジ部や、部品と部品の隙間から埃や汚れが混入します。そこで「フリーサイト」は埃や汚れの混入や、ネジ部等のデリケートな部品の破損を防ぐため、すべての部品がこのカプセルの中に納まっています。
とは言っても「フリーサイト」は精密機械なので、分解したり落としたりは絶対にしないで下さい。
持ち運ぶ際も、銃から取り外して専用のケースに入れて運搬して下さい。
専用ケースと付属の4mmブロック
「フリーサイト」のクリックネジは、とても精密かつ正確に出来ています。
1クリックで何ミリ動くか?の表記はマニュアルでは記述がありませんでしたが、エアライフルの場合での照準距離(フロントサイトリングとリアサイトのピープ穴の間)を80cmに設定した場合、1クリックでファイナル点の0.1点分動きます。これはファイナル競技の際、サイトを合わせるのには非常に便利だと思います。
例えばファイナル中に10.0に当たった場合、10.9のど真ん中に入れたい場合は9クリック動かせば10.9になるからです。
また18クリック動かせば、左(上)の10.0から右(下)の10.0まで動く計算になります。
サイト調整の表示
「フリーサイト」の表示(上下、左右に動かす際の矢印)は全て「フリーサイト」の上面に表記されています。通常のリアサイトの表示は全てクリックノブの上面に表記されている為、矢印の方向を確認する際には大きく射撃姿勢を崩し、覗き込まないと見えませんでした。矢印を「フリーサイト」の上面に表記した事により、リラックスした姿勢でクリックノブを回す方向を確認する事ができます。
「フリーサイト」は開発コンセプトの関係上、非常にコンパクトに作られているため、上下、左右の可動範囲が極端に狭く出来ています。そのため、色々な弊害があります。
したがって次の事項をお読みになり、十分に理解してからお使いになって頂きたいと思います。
フリーサイト取り付けネジ
「フリーサイト」の銃への取り付け方法は、左右にリアサイト固定用の爪が在りますが、左側面の固定用ネジ(3mm)のみを使って固定して下さい。
右側面の固定用ネジは特殊ネジ(トルクス)になっているので、専用のレンチがないと緩める事が出来ません。したがってこのネジは、決して緩めないで下さい。
もし緩めてしまうと、リアサイト取り付け用のアリ溝のセンターと、リアサイトのセンターが狂ってしまい狭い、可動範囲内でリアサイトが合わせられなくなってしまう可能性があるからです。
*エアライフルにフリーサイトを取り付ける場合
もし、今お使いの空気銃にハイサイトブロックを使わず、「フリーサイト」を直接銃本体に取り付けお使いになる場合には、フロントサイトの下に「フリーサイト」の付属品である4mmのブロックを、フロントサイトの下に入れてください。
この理由は、「フリーサイト」の上下移動用のクリックノブを、リアサイト本体の下に入れた為、通常のリアサイトよりピープ穴が4mmほど高くなってしまうからです。
もし、すでに8mmのハイサイトブロックをご使用の場合は、リアサイトの下の8mmのブロックのみを「フリーサイト」の付属品である、4mmのブロックに交換して下さい。
現在、エアライフル用のMECチューブをご使用になられている方の場合は、リアサイト側の4mmのブロックを外して使用するか、もしくはフロントサイトの下に「フリーサイト」の付属品である、4mmのブロックを入れて下さい。
これらの約束事を守り、後はお好みによりフロントサイトとリアサイト共に、同じ高さのハイサイトブロックをお使いになって、サイトライン(照準軸線)の高さ調整を行って下さい。
ANSとフリーサイトのピープ穴位置の高さの比較
*スモールボアライフル銃に「フリーサイト」を取り付ける場合
空気銃の場合は、照準距離が約80cmになります。
もしお使いになっているライフル銃の照準距離が約80cmくらいでしたら、空気銃と同じ様にお使いになれると思いますが、もし長いエクステンションチューブなどをご使用になっている場合、空気銃とまったく同じ様にとは行きません。
照準距離が長くなればなるほど、リアサイトを上方に上げないといけなくなるからです。
もし、現在ご使用のリアサイトが10点に当る様に、サイトが合っていてなおかつ、アイピースがリアサイトの中心に来ているのであれば、フロントサイトの下にエアライフルと同じように付属の4mmのブロックを入れてみて下さい。
リアサイトの中心にアイピースがない場合は、ノギス等を使って計算して下さい。
特に標的交換機などをご使用の方は、次の事にも注意して下さい。
「フリーサイト」を付けて初めて射撃をする場合は、必ずボアサイティングから始めて下さい。
標的交換機を打ち抜いて壊してしまったり、跳弾を発生させる事故を起こす可能性がありますので、十分に注意して下さい。
では、なぜ「フリーサイト」をコンパクトに製作したか?という理由は、射撃中の視野を大きく確保する事に重点を置いたからです。
この視野を大きく確保するにあたり「フリーサイト」には他のリアサイトには無い、次の2つの工夫がされています。
1つ目は、通常リアサイトの上方にある上下移動用のクリックノブを、リアサイト本体の下部に配置して上方部の視野を広く確保しました。(これはリアサイトの取り付け位置によってはクリックを動かし難くなります)
2つ目は、通常リアサイトの真横にある左右移動用のクリックノブを、リアサイトの前方へ移動し、なおかつ下方向に下げて左右の視野を広く確保しました。
更に左右移動用のクリックノブは、リアサイト本体の両側に取り付けてあり、左右両方の射手にもご使用頂ける様に工夫されています。
クリックノブの位置
では「どうして広い視野の確保が必要か?」と言うと、世界のトップシューターの殆どが据銃後照準を合わせる前に、リアサイトの上から自分の標的が銃身線の延長線上にあるか確認します。監的間誤射を防ぎまた、銃の傾きが一定であるかを確認する為です。この動作は照準前の一瞬の動作ですが、とても基本的な行為です。据銃後は視野から外部を見る事により、自分の体の揺れやバランスの狂いをいち早く察知するのに役立ちます。
これらの一連の動きのサイクルが簡素化できる為、射撃中の据銃時間を短縮する事が可能になり、体力の消耗も防ぎます。
幅の広い視野を確保
室外射撃場では、据銃中に自由な視野を確保する事は、射手にとって必ず有利に働きます。
大きな視野は風による、風旗の動きや草のわずかな動きも、見逃しません。
10点を撃ち続けるためには、同じ風の状況下での射撃が特に重要で、大きく着弾点を狂わす要因となる、突風からの被害をも免れやすくなる事でしょう。
また、通常のリアサイトを使用していると据銃中には、ご自分の射座から離れた風旗しか見ることが出来ませんでしたが、コンパクトな「フリーサイト」をご使用いただく事により、特に重要なご自分の射座に近い風旗を見る事が可能になります。
室外射撃場では、アイシールド(目かくし板)をできるだけ小さい物を使う事をおすすめします。これは標的側から差し込む強い光から、目の瞳孔の動きを保護し目の疲労を軽減する為でもあり、また小さなアイシールドを使う事で、確保された視野を大きく妨げない様にする為でもあります。
また「フリーサイト」の前方に付いているチューブは、手で簡単に引き抜く事が出来ます。
お客様のお好みにより、チューブを付けたり外したりしながら使い分けて下さい。
簡単に外せるチューブ
「フリーサイト」のマニュアルに記述がありませんでしたが、以前のコラム(#27 セントラ サイトベース 10−50)でも述べた様に広い視野を確保することで、照準中の目の瞳孔の動きを抑制する理由も込めて、コンパクトな設計にしたのではないか?とも思います。
これらを十分理解して射撃をすればMEC社の「フリーサイト」はあなたの強力な味方になる事は間違いないでしょう。
「フリーサイト」にはファインベルクバウ用、アンシュッツ用、ワルサー用の3種類があります。当店では、ファインベルク用とアンシュッツ用のみを在庫していますが、品切れの際にはご了承下さい。
お買い上げになられる際は、お客様のお使いになっている銃種を、必ずご連絡下さい。
(注)写真の「フリーサイト」には、セントラ社のアジャスタブルアイピースが付いていますが、実際には付いていません。
K
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