ここ数年、気軽に楽しめる射撃として人気が出てきた銃が、狩猟用のハイパワーエアライフルです。
この銃はあくまでも空気銃なので、初心者の方でも初心者講習会に受かれば所持許可申請が出来ますし、既に銃を所持している方も直ぐに所持許可申請が出来るお手軽な銃だと思います。
このハイパワーエアライフルで標的射撃をするフィールドターゲットは、イギリスから流行り出したようでドイツの競技銃メーカーもイギリス向けに、フィールドターゲット用ハイパワーエアライフルに力を入れ出しました。
日本ではまだまだ、フィールドターゲットとしての競技が、まだ完全に確立していないようですし、50mで空気銃を撃てる射撃場も限られています。
また鉛問題で、クレー射撃場がどんどん閉鎖されているこの時代、銃を撃つだけでも遠くの射撃場に行かなければ撃てないなんて事も起きているのが現実問題で、徐々に射撃人口も少なくなっているのが現状です。
射撃には興味があっても、ライフル射撃協会やクレー射撃協会に入会して「オリンピック競技をめざそう」「猟友会に入ってハンティングをしたい」なんて事は、一切思っていない方が実際には多いのでは?と思います。
そんな方々に気軽に楽しんで頂けるのでは?と思うのが、これから発展して行くと思われるフィールドターゲットの世界ではないかと思います。
最近当店にも、問い合わせが大変多くなってきている事から色々と吟味した結果、価格の比較的安いオーストリアのステイヤー社製ハイパワーエアライフル「LG110シリーズ」を試しに輸入いたしましたので、簡単ではありますが紹介をさせて頂きます。
ステイヤー LG110 ハイパワー
世間一般的に言うステイヤー社は、オーストリアのステイヤーと言う工業都市にある「ステイヤー・マンリッヒャー」という会社で、創業1864年の140年以上もの長い歴史があります。シュエナーやSSG更にはAUGなどと、数々の名銃を作ってきた会社で、私自信もマンリッヒャーライフルを以前は、3丁ほど所持をしていました。
古くからハンティングをしている人には「マンリカ」の名称で親しまれてきましたので、射撃暦の長い人にとっては「ステイヤー」という名称より「マンリカ」といった方が馴染み深いでしょう。
長い歴史のあるステイヤー社といえども数年前、リストラの為か「ステイヤー・マンリッヒャー社」から競技用空気銃部門が完全に独立し、別会社になったため「ステイヤー・スポートワッフェン(競技銃)」と言う会社名になりました。ハイパワーエアライフルはこの「ステイヤー・スポートワッフェン」社の製品です。
「ステイヤー・スポートワッフェン」は今、ドイツのアンシュッツ社との共同経営になっております。
余談ですが当店がステイヤーを輸入した当時、よくお客様から「ステイヤーは、なんて発音するのが正しいのですか?」聞かれた事があります。
私も実際にはなんて発音するかは、正確にはわかりませんがドイツ語読みで、多分「シュタイア・シュポルトヴァッフェン」と言えば、ドイツ人やオーストリア人に通じるかも知れません。
ステイヤー・スポートワッフェンのロゴマーク
会社名を見ていただくと理解できると思いますが、この会社は競技銃専門メーカーなのです。
競技銃の世界では、空気銃は4.5mmのみで競技が行われます。したがって4.5mmの口径以外は存在しないのです。
しかし今後の様子を見て、5.5mmも作るかも知れないとの報告も受けています。
ステイヤー社製の銃は、アンシュッツ社との共同経営なので銃身はもちろん全て、アンシュッツ社製の銃身になります。
アンシュッツ社製の競技用空気銃はファインベルクバウ社と共に、数々の世界記録を樹立し合っている世界有数の競技銃メーカーです。
したがって4.5mmの銃身の精度は、世界の1、2を争うと言っても過言ではありません。
5.5mmは、スモールボアライフルの銃身を使えば、簡単に出来てしまうのでは?と素人考えで思ってしまいます。
もしスモールボアライフルの銃身を使うとしたら、アンシュッツ社の圧倒的世界シェアを考えると間違いなく、世界一の銃身になります。
でも実際には減圧装置や弾速の問題、銃身ツイスト等の関係があり、銃身だけを取り替えて上手くいくはずが無いのは、私も十分に理解しているつもりです。
ハイパワーエアライフルはこれから、世界中でどんどん流行って改良されて、競技方法が確立されて行けばもっと手軽に楽しめる、素晴らしい空気銃になる事でしょう。
当店には本当に多くの方から「この銃はハンティングに使えますか?」「どうして連発できないのですか?」とか「50m先の鴨が獲れるくらいのパワーはありますか?」と、私たち射撃競技しかしない我々スタッフには、お答えするのが難しい質問をされる事が多くなっています。
これらの狩猟を目的とした質問を、競技銃専門のメーカーであるステイヤー・スポートワッフェン社に問い合わせては大変失礼だと思い、お客様への対応にも困っている次第です。
LG110シリーズはあくまで、競技銃メーカーが紙の標的を撃つことだけを考えて作られた銃なので、当店としても「鴨撃ちにいいですよ」なんて決して答える事が出来ません。
購入されたお客様の目的が何かは、お客様の判断なので購入されましたらお客様自身で、楽しい射撃を行って下さい。
では、このステイヤー社のハイパワーライフルは、どの様な射撃に向いているのかは、次のデーターを参考にして下さい。
テクニカルデーター
銃の全長:87.6cm
銃身長:43.0cm
重量:3.1kg
口径:4.5mm
型式:サイドレバー式圧縮空気銃
トリガー:2ステージトリガー
トリガーウェイト:約200g(調整可能)
弾倉:無(単発)
弾速調整機能:無
シリンダー:200気圧(着脱式)
発射弾数:200気圧(フルチャージ)時で約50発
弾速:275m/s(900f/s※)
パワー:24ジュール(19ft/lbs※)
スコープマウントベース:11mm幅のアリ溝
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この数値は当店でcb−625 Mark4を使って測定した数値です。
パワーが強すぎるせいか?5発ほど撃ったら弾速計が壊れてしまったので、正確な数値ではありません。 |
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H&N社バラクーダマッチ(0.69gm・10.65gr)を使ってテストした結果です。
通常の射撃用空気銃弾(0.53gm・8.18gr)を使用したら、約300m/sの初速を得ることが出来ました。 |
24ジュールモデルの他にはパワーの少ない、17ジュールモデルと7.5(通常の射撃用空気銃と同じパワー)ジュールモデルの3種類のパワーがあります。
パワーの変更は出来ませんので、もし違うパワーが欲しい場合は、銃をもう一丁購入しないといけません。
グリップからバットプレートにかけては木製ですが、ストックのフォアエンド部はアルミニュームなので、寒冷地では銃を持つ左手が冷え切ってしまうかも知れません。
装填レバーは右側にしかありません(右射手専用)が、ストックは左右対称です。
この銃は、あくまでも競技専用銃なので安全装置が付いていませんが、装填レバーが完全に閉まっていない状態では空撃ちになり、引き金を引いても撃発しませんので安全な状態にしたいのであれば、装填レバーを開放した状態にして下さい。
装填口の周囲
装填口の周囲は、スポンジで保護されています。このスポンジは通常の競技用空気銃には付いていませんが、試射をしてみて初めて何で付いているのか?の理由が分かりました。
これは、あまりにも発射時の空気圧が高い為に撃った瞬間、装填口から空気が漏れて狙っている顔に、バックファイヤーの様な風圧がかかってしまうのを防ぐ為の様です。
でもこのスポンジが邪魔して、ちょっと弾を装填するのに慣れるまで苦労します。
狩猟用の空気銃は通常、シリンダーを取り外す事が出来ないモデルが多い様ですが、競技用空気銃の場合はほとんどのメーカーが、着脱式のシリンダーを採用しています。
これは比較的トラブルの多いシリンダーを、トラブルが起きた際には簡単に交換できる利点があります。
一日の弾数を数多く撃つ場合は、スペアのシリンダーを持ち歩いていれば、何があっても安心して射撃に集中できます。
一番の利点は、ハンドポンプで空気が充填しやすいところです。
射撃時以外は、スペアシリンダーを銃から取り外すか、シリンダーを緩めるかをして下さい。
シリンダーを銃に付けた状態にしておくと、銃の内部に高圧空気が常に入った状態になります。
高圧空気が銃の内部に入っていると、常にスプリングやパッキンに負荷をかけた状態になります。
負荷を長時間かけっぱなしにしておくと、スプリングやパッキンの耐久力が低下して、トラブルの発生が早く起きてしまいます。
圧縮空気式の銃は、突然のトラブルで発射不可能になるほどデリケートな銃です。
大切に取り扱って頂きたいと、思います。
スペアシリンダー
この銃の最大の特徴は、競技銃メーカーが作った銃なので、トリガーがとても軽く切れが良いという事です。
更に今や競技用空気銃の世界では、付いているのが当たり前になった反動吸収装置の「スタビライザー」が、銃に組み込まれております。
同じパワーの空気銃と撃ち較べて頂ければ、スタビライザーの効果で発射時の反動が大幅に軽減されているのを、はっきりと体感できると思います。
パワーがパワーなだけに、発射音はスモールボアライフル並みの音がします。
射撃時には、イヤープロテクターの着用をお薦めいたします。
50mでのテストターゲット
メーカー出荷時につける50mでのテストターゲットには、H&N社のバラクーダが使われています。
したがってバラクーダに合わせて、銃の最終調整がされています。
購入された方はバラクーダ(現在、当店では取り扱いをしていません)または、バラクーダマッチをお使いいただくと、この銃の命中精度を最大限に発揮できると思います。
H&N社 バラクーダマッチ
最後になりますが、よくイギリス製のハイパワーエアライフルをお持ちの方から、私が受ける質問で「ステイヤーは壊れませんか?」と、よく聞かれます。
はっきり言って圧縮空気式の空気銃は、使いっぱなしだと早かれ遅かれ必ず壊れます。
当店が代理店をしているファインベルクバウ社の銃でさえ、初期トラブルが発生します。
銃の使用状況によっては、なかなか壊れない銃もありますが、ノントラブルで使えるのも最長3年位が限度だと思います。
特にパワーの強いハイパワーエアライフルとなりますと、それ以上にトラブルが起きるサイクルが早くなると思います。
原因は、部品と部品をつなぎ合せる部分の空気漏れを防ぐパッキンの劣化、空気を放出するためのストライカースプリングのヘタり、空気中の水分によるバルブ弁の錆び付き等が原因になります。
したがって当店では、当店から直接ご購入頂いたお客様に限り「無料オーバーホール券」と「保証書」をお付けしております。どちらも有効期間は2年間です。
定期的にオーバーホールする事により、パッキン類の破損やバルブの錆び付きを未然に防ぎ、銃の調子がおかしくなる前に、再調整をする事が出来ます。
当店もまだ、ステイヤー・LG110ハイパワーライフルの分解修理には自信がありませんが、今後は十分対応出来るように努力していきたいと思います。
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