後編を書いていたら、思わず長文になってしまい、書いている私でさえも、飽きたし疲れてしまったので、今回は途中で止めて中編とさせていただきます。
全部まとめていると、3月が終わるまで更新できそうにないので、小出しにして行くことに決めました。
後編もちゃんと書きますので、後編はもうしばらくお待ち下さい。
IWA報告の中編と後編は、私のあまり得意としない分野を、紹介させていただきたいと思います。
得意分野で無いので、説明不足や認識不足な点がいくつも出てくると思いますが、ご了解いただきたいと思います。
また間違い等ございましたら、私の勉強にもなりますので何かの機会にこっそりとご指摘下さい。
私の得意としない分野とは、ハンティング・ライフルの分野です。
紙の標的を撃つライフル銃しか所持をしていない私にとっては、ほとんど興味のない世界です。
しかしながら、私なりに勉強してまいりましたので、その成果をご報告させて頂きたいと思います。
ちなみにハンティング・ライフルの部門につきましては、既にラスベガスで行われた「ショットショー」ですべて発表されている物ばかりです。
各メーカーのホームページなどで閲覧したものを、私の目で実際に確認した物のみを報告しますので、目新しさはまったく無いと思いますが、お付き合い下されば幸いです。
それでは中編のハンティング・ライフルの紹介です。
【サコー】
今はイタリア・ベレッタ社の傘下にあるフィンランドのサコー社は、大好評だったM75からM85の機関部へと進化させました。
M85機関部
このM85ニューライフルはパッと見た目の外見上、M75とまったく違いが分からない為、ショットショーでは見過ごしてしまった方も多いのでは?と思います。
M75がショットショーで発表されたときは、IWAまでの短い間でも日本ではかなり話題になったものですが、今回のM85はショットショーが終わっても、まったくと言っていいほど話題にも上がりませんでした。
「何でだろう。いい銃ではないのかな?」と、私もIWAの会場に行くまで疑問に思っていた位でした。
現地実際に見てみると「な〜んだ、M75と一緒だねっ!」で、私も危うく終わらせてしまうところ。それほど外見はほとんど変わっていなかったのです。
しかしあのサコー社がモデル番号を換える訳ですから、変わっていないはずありませんよね。
それでは何処が進化したのかを、ご説明させて頂きます。
≪ストック≫
チークピースとバットプレート
M75のチークピースはモンテカルロ型と呼ばれているチークピースで、頬付けの部分が盛り上がっている形でした。しかしM85はバットプレートまで一直線です。その分バットプレートが少し上に上がり、反動が真っ直ぐ後に受けることが出来るようになったそうです。
バットプレートの色も、黒に統一されました。
≪ボルトの改良≫
最初は、ダブルフィーリングとかコントロールフィーリングとか、サコー社での専門用語?で説明され最初のうちはまったく理解できませんでしたが、話を聞いているうちに「あぁ、こんな事を言っているんだ!」という事がわかりました。
ボルトの後端下部
ボルト後端部のキャップを小さく改良したため、機関部とボルトの擦り合わさる部分が少なくなり、ボルトの前後の動きが更にスムーズになったそうです。
これがコントロールフィーリング??
ボルトヘッド上側 ボルトヘッド下側
通常のライフル銃のボルトヘッド(モーゼルアクションを除く)は、ボルトを閉鎖した際に薬莢のリムの入り込む部分だけ、丸く凹んだ加工をしている銃がほとんどです。
これは実包を、ボルトヘッドのセンターに保持させる為の物です。
しかしこのM85は、写真の通りボルトヘッドの下側が、削り取られています。
これは実包がボルトを前進させる際、マガジンから外れた実包のリムがボルトヘッドに滑り込みやすいように、削り取られているのです。滑り込ませる事で、実包のリムをエキストラクターに直接、はめ込んでしまうのです。
これがダブルフィーリング??
では、何でこの様な事が必要か?と言うと私の知識では、なかなか説明が上手くできませんので、理解し難い所があると思いますが、ご了承下さい。
例えて言うなら、頑丈なエキストラクターを持つモーゼルアクションを例にあげれば解りやすいのでは?と思い、ご説明いたします。
モーゼルアクションは、先に実包を薬室に入れてからボルトを閉鎖しようとしても、頑丈でビクともしないエキストラクターが薬莢のリムにぶつかり、ボルトを閉鎖させることが出来ません。
一度、マガジンに実包を入れてからボルトを前進させて、薬莢のリムをエキストラクターに噛ませながら装填させます。
M85はこれとまったく同じ発想で、ボルトを前進させマガジンから実包が上がったと同時にエキストラクターの爪に薬莢のリムが入り込む設計です。
(M85のエキストラクターには、スプリングが付いていますので実包を先に薬室に装填してからでも、ボルト閉鎖できます)
通常のライフル銃は、ボルトを完全に閉鎖しない限り、エキストラクターの爪に薬莢のリムがかかりません。したがって薬室に入ってしまった実包を排出させる為には一度、完全にボルトを閉鎖させてからでないと、実包を排出することが出来ません。
したがって中途半端にボルトの操作をしても、薬室から実包を排出することが出来ないのです。
これは通常のライフル銃ですと射撃時に、何らかの理由でボルトを完全に閉鎖することなく、そのままボルトを後方に引ききった時、マガジンから外れた実包は薬室に残ったままになります。
そして更に、ボルトを前進させると次弾がマガジンから外れ、最初に薬室に入っていた実包の雷管を次弾の弾頭で、叩いて誤発砲しまう恐れがあります。
このM85やモーゼルアクションと同じ様な設計ですと、たとえ途中でボルト操作を中断しても、次弾を装填しようと思いボルトを後方に引けば、先に装填されていた実包が自動的に排出される事になり、誤発砲を自動的に防ぐ事が出来ます。
何が起こるかわからないハンティングの時には、とても有効な安全装置の役割にもなっています。
リコイルラグ
さすがにストックを外して写真を撮る訳にはいかず、図面の写真を撮らせていただきました。
ラグの位置が前方に移動し、大型化しています。
ボルトのロッキングラグとリコイルラグの位置を離した事で、ストックに与えるダメージをリコイルラグ部品の長くなったフロントベディングサーフェース部分でショックを逃がそうとしているのでしょうか?
もしそうであれば、リコイルラグ部品に負荷がかかりすぎると思いますが…
M75のリコイルラグ
ちなみに写真はM75のリコイルラグです。
比較してください。
マガジンキャッチャー
これは何度やってもマガジンキャッチャーのレバーが動かず、マガジンが外せません。
説明をしてくれたお姉さんに苦笑いをされ、とても恥ずかしい思いをしました。
マガジンキャッチャーレバーにも、ちょっとした秘密が隠されていたのですね。
このマガジンに私は、大恥をかかされ悔しい思いをさせられたので、ちょっとした秘密については今回、秘密にしておきます。
(実は記憶が完全でなく断片的なので、うまく説明できないのです。ごめんなさい)
テクニカルデータ
写真の通り、機関部のサイズは現段階ではS(308Win)・SM(WSM)・M(30‐06SPG)の3種類のラインナップです。
今後は更に種類を増やして、XS(222Rem)・L(Mag)・LM(338ラプアMag)の3種類をラインナップに追加して、6種類の機関部で販売していく方針だそうです。
現在は338ラプアマグナムを撃てる、量産型のハンティングライフルが無かったので早くラインナップにのることを、楽しみにしています。
【レミントン】
レミントンブース
毎年IWAの会場では、まったくやる気の無いレミントンです。
時にはブースには「スタッフもいないし、銃もない」なんて事は、今までも何度かありました。
でも今年は違います。
銃は8丁くらい並んでいて、スタッフも3人ほどいました。
新製品が何種類か発表されたので、少しはやる気があった様です。
M798の機関部
ではこの何種類かの新製品のうちの一つをご紹介させていただきます。
モデル名はM798という、ボルトアクションライフルです。
勘の良い方なら直にわかると思いますが、この銃はレミントン社のロングセラーであるボルトアクションライフル・M700とモーゼル98の名前の番号をたしただけの名称なのです。
すなわち、レミントン社製のモーゼルアクションライフルなのです。
M798のボルトをオープン
数年前にはウィンチェスター社が、Pre64の機関部を再び生産を開始し始めました。
ボルトアクションの原型と言われているモーゼル98アクションも、21世紀に入ってまさかレミントンにまで使われるとは、思っていなかったでしょうね。
それほどモーゼルアクションは、優れた設計の機関部だったのです。
ちなみにM798のショートアクションモデルは、M799といいます。
他にはボルトに、3枚ロッキングラグを採用した、M710いうモデルもありました。
詳細は取り扱う銃砲店にお任せと言うことで、さわりだけで止めておきます。
もし当店が取り扱いを開始した場合は、改めてコラムでご紹介をさせて頂きます。
【モーゼル】
さて、レミントンにまでモーゼル98アクションを使われたモーゼル社は、一体どんな銃を製作しているかと言うと、やっぱり数年前にモーゼル98アクションの銃を、再生産し始めていたのです。
でもこの話しは、皆さん既にご存知だと思うので、触れずにおきます。
モーゼル社製作のモーゼル98アクション
何の気なしにブースを眺めていたら、炭素焼き仕上げの綺麗なM03というライフル銃が私の目に止まりました。
モーゼルM03
モーゼル社のスタッフが「英語苦手で上手く話せませんが、ご説明しましょうか?」と親切に声をかけてくれましたので「私も日本語しか喋れないが、お願いします」と伝え、説明を受けましたので、当店では取り扱いの予定がありませんが、ご紹介させて頂きます。
まず始めに、ボルトセーフティーの作動方法を教えていただきましたが、競技銃しか撃たない私にはボルトオープンが一番の安全装置なので、チンプンカンプンです。
しかしセーフティーの使い方のよっては、完全にボルトを動かなくさせる事が出来るそうです。
この銃はテイクダウン方式で、ストック下部の二本のネジを外すと簡単に銃身が外れます。
全体的に細めでスマートな機関部の作りをしていたので、まさかこの銃がテイクダウン方式だとは、思いもしなかったです。
銃身を外したところ
ストックの内側にはご丁寧に、グラスベディング加工も施されています。
ストックの内側
外した銃身を見ると分かりますが、ボルトのロッキングラグが銃身に入り込む仕組みになっています。したがって機関部には、発射時の反動の負荷が、かかりにくい構造になっています。
ロッキングラグの入るところ
そしてまた、ボルトヘッドもワンタッチで簡単に外せます。
したがってこのM03という銃は、銃身とボルトヘッドを交換する事によって、あらゆる口径の実包に対応できる便利な銃です。
ボルトヘッドを外したところ
でもこのシステム、どこかで見たような気が??と思っていたらどうやら同じドイツの、ブレーザー社の製作だそうです。
モーゼル社は会社の一部が売却され、全てのモーゼルブランドがファインベルクバウ社のある町、オベルンドルフにあるわけではありません。このM03もカタログに書いてある住所を見ると例外ではありません。
私、個人的にはこれからも、オベルンドルフにある、ファインベルクバウ社、モーゼル社、H&K社の3社には企業の買収、吸収に負けずこれからもがんばって貰いたいと思っています。
そして最後に、モーゼル社のスタッフにお礼を言わせていただきます。
高そうな炭素焼きモデルを、わざわざ分解して見せて貰って有り難う御座います。もっと安そうな銃でもよかったのに。
中編は何だか、モーゼル98アクション特集になってしまいましたが、私は決してモーゼル98アクションが好きなわけではありません。
ただ銃器メーカーが、一番頑丈な機関部を追い求めていくと結果、モーゼル98アクションにたどり着いてしまうだけの事なのでしょうか?
後編に続く
K
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