#075 ('07/02/24)

カール・ツアイス ビクトリーディアレンジ  M3-12 × 56T

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カール・ツアイス ディアレンジ


「 IWA 報告 後編」でもご紹介した、光学機器の世界で常に業界トップを走り続ける、ドイツのカール・ツアイス社から発表された、レンジファインダー付ライフルスコープが再入荷しましたので、ご報告いたします。
正式名称はビクトリーディアレンジ  M3-12 × 56T なのですが、長ったらしい名称なので以下は、ディアレンジと省略して紹介をさせて頂きます。
今回は通常のディアレンジと、オプションのブレットドロップ・コンペンセーター付のディアレンジを 2 種類、輸入いたしました。

カール・ツアイスのレンズと言えば、もうみなさんご存知と思いますが、ソニーのデジタルカメラやビデオカメラに採用されているレンズです。
眼鏡や医療関係等にも幅広く使われており、我々射撃関係者以外にも、とても馴染みの深い光学機器メーカーです。
しかし、ソニー製品に装備されているカール・ツアイスのレンズは、日本国内においてライセンス生産されているレンズらしいのです。(とある家電量販店の販売員談)
すなわちソニー製品のカール・ツアイスレンズは、 Made in Germany ではなく、 Made in Japan らしいのです。
実は当店のホームページに掲載されている殆んどの写真が、ソニーのデジタルカメラで撮影した写真です。会社の所有物のカメラは勿論、当店のスタッフもソニーを使っている人が何故か多いのです。
今回輸入したディアレンジには、 Made in Germany の文字が入っていますので、レンズはたぶん…間違いなく Mede in Germany でしょう。

最近はカール・ツアイスのライフルスコープでも、 Made in U.S.A が大量に日本で(世界中で)販売されています。価格はもちろん、 Made in U.S.A の方がリーズナブルです。
IWA の会場で、カール・ツアイス社のスタッフに聞くと「買うならドイツ製を買いなさい」と言います。ドイツ人にとってはやはり Made in Germany しか、認めないのでしょう。


さて年輩のシューターの方なら周知の事実だと思いますが、つい数年前まで旧東ドイツのイエナという街にカール・ツアイス社があったのです。
西側のカール・ツアイスとはロゴマークも異なり、カール・ツアイス・イエナとなります。
どうも聞くところによると、カール・ツアイスの本家は、このカール・ツアイス・イエナらしいのです。

冷戦も終わり東西ドイツが統合したため、カール・ツアイス・イエナはカール・ツアイスの商標を使えなくなってしまったそうです。したがって今は、ドクターに社名を変えて存続しています。
ドクターの社名はあまり聞きなれない名前ですが、立派な歴史がある会社の製品なのです。
とある日本の銃砲店でも、ドクターサイトの名前でドットサイト販売をしております。
このドクターサイトのドクターが、昔のカール・ツアイス・イエナなのです。
私もこの業界に足を踏み入れたとき、よく年配のドイツ軍マニアの方から「イエナは良くないから、安くても買っちゃダメだよ」なんて事を言われましたが、イエナの歴史を知るとどうしても欲しくなり、イエナの製品を購入した過去があります。
購入した品物は、ハンディータイプのターモンという単眼鏡です。
小さいくせに良く見えるので、私の愛用の品になっております。
もう新品が入手するのが困難な逸品で、イエナのブランドが無くなってしまったのが今を思うと、非常に残念だと思います。

ターモン


今では、各光学機器メーカーからターモンの類似品が多数、販売されております。
ここ最近、レンズのコーティング技術も向上し、ターモンより明るく見える物が販売されております。
しかしターモンは旧東ドイツの製作です。
今となっては生産技術こそ劣るかも知れませんが、レンズの素材となるガラスの質が違うのです。
西側諸国と違い、素材の回転が遅く、ゆっくり時間をかけて寝かし、安定した素材を使って作られたため、見える画像が、とてもクリアになるのです。ただし、ちゃんと組まれていればの話ですが。
でも今、このターモンを壊してしまったら、修理がどうなるかが心配なので、大切に使って(しまって)おります。

などと言うカール・ツアイス・イエナの話はすべて、私が年配のお客さんやドイツのメーカーの御大からウンチクを聞いて、そして興味を持って得た知識なので、間違いがあるかも知れません。
最近は私にウンチクを語ってくれるお客さんが、だんだん少なくなってきました。
何か面白いウンチク話がありましたら、お時間のあるときにゆっくりと聞かせてください。



話がだいぶ逸れてしまいましたが、そろそろ本題に戻ります。

ディアレンジは、ライフルスコープにイルミネーションレティクルを装着し、更にレンジファインダー(距離計)を合体させてしまった全く新しい発想から生まれたライフルスコープです。
バッテリーは CR-123A というフォトバッテリーを使います。このバッテリーは、家電量販店で¥ 1000 以下にて入手できますので、バッテリーが無くなってしまっても安心してください。
ディアレンジ左横のつまみを緩めると、簡単にバッテリーの交換ができます。
バッテリーは、イルミネーションを点灯したままでも、3時間の放置で自動的に電源が切れます。

バッテリー交換


銃にディアレンジを装着する際、スコープマウントはリングマウントを使いません。
ディアレンジの下側にレールが切ってあります。
そのレールに EAW 社から販売されているカール・ツアイスのレール用マウントで取り付けます。

レールに EAW 社のサコー用マウントを取り付けたところ


イルミネーションレティクルのスイッチは、左側面のボタン(+と−)を同時に長押しします。
イルミネーションの明るさは、イルミネーションが点灯した後に、+−のそれぞれのボタンで調整します。
他社のイルミネーションと比べると、それほど明るくないので点灯しているか点灯していないかの確認は、暗い所を見ながら確認をしましょう。

イルミネーションのスイッチ


レンジファインダーは 1m 〜 999m まで計れます。
レンジファインダーのスイッチは、ディアレンジの左下側のポッチを押すと作動します。
このスイッチは、スコープを覗きながらターゲットをクロスの中心に狙い、据銃したまま親指でスイッチを押す事ができます。

レンジファインダーの作動


レンジファインダーのスイッチを押すと、対物レンズの左側からレーザーが出ます。
対物レンズのセンターとレーザー放出口の位置が離れているため、距離によってはレティクルとレーザーの当たる位置に大きな誤差が生じると思われます。
が、しかしそこは世界のカール・ツアイスです。
なんと上下のクリックノブを回して、レティクルを上下に動かすと、自動的にクリックノブの動きに連動し、レーザーの飛ぶ方向を、調整してしまうそうなのです。
ただ上下だけ連動し、左右の動きには連動しないそうです。

レーザーの放出口


別売りのブレットドロップ・コンペンセーターを使うと、さらにディアレンジの使い勝手がよくなります。
ご自身が使う実包のバリスティックデーターを教えれば、それに合うブレットドロップ・コンペンセーターをメーカーが用意してくれるそうです。
このコンペンセーターとレンジファインダーを使えば、瞬時に着弾点を調整する事が出来ます。
ただしこのブレットドロップ・コンペンセーターは、後付をする場合はメーカーに送り返さないといけないとの事です。ブレットドロップ・コンペンセーターをご希望の方は、ディアレンジのご注文と同時にご依頼下さい。
お客様のご使用になる弾、バリスティックデーターに合わせて、受注輸入をいたします。

オプションのブレットドロップ・コンペンセーター


さて、このブレットドロップ・コンペンセーターの使い方を、長瀞射撃場の 300m で試射をする場合を例にして、簡単にご説明いたします。
まず、最初にレンジファインダーを使って、標的までの距離が 300m かどうか?確認をして下さい。
レンジファインダーの示す数値に、かなりの誤差があったら笑って誤魔化すしかありませんが …
その後、 300m で実射を行い、スコープを合わせて下さい。
スコープ合わせが終わったら、ブレットドロップ・コンペンセーターのメモリがどの位置にあるか、確認をします。
たぶん 300m のメモリに合っていないと思います。
コンペンセーターは中央部に、マイナスネジ一本で取り付けてあります。
このネジを緩めて外すと、ブレットドロップ・コンペンセーターも外せます。
ネジを緩める際、クリックも一緒に回してしまわない様、注意して下さい。
またネジの下に入っている O リングもなくさない様に注意して下さい。
そしてブレットドロップ・コンペンセーターのメモリを 300m に合わせ、ブレットドロップ・コンペンセーターの取り付けネジを締め付けて下さい。
そして念のためそのまま、レンジファインダーで計測をして下さい。
もし、一番最初に測った数値とほぼ同じ数値が出たら、これで終了です。

ブレットドロップ・コンペンセーターの調整


後は実際に猟場へ行った時、ターゲットまでの距離を測って下さい。
もしレンジファインダーの数値が 200m を示したのであれば、ブレットドロップ・コンペンセーターのメモリを 200 に合わせて下さい。
そこでもう一度、レンジファインダーで距離を測り直してください。
ではなぜもう一度、測り直すかと言うと、レーザーの飛ぶ角度がブレットドロップ・ コンペンセーターのメモリによって若干の違いがある為です。
ブレットドロップ・コンペンセーターのメモリが 100m を指している時に、レンジファインダーが 300m を表示していたら、レーザーはレティクルの中心より下を狙って測っている事になります。
そこで 300m にブレットドロップ・コンペンセーターのメモリを合わせれば、初めてレティクルのセンターにレーザーが飛んでいく事になるからです。
そして狙い越しをする事なく、ほぼレティクルのセンターに弾が飛んでいくハズです。
ただしブレットドロップ・コンペンセーターは、撃ち上げ撃ち下ろし、横風までは計算してくれませんので、注意してください。

カール・ツアイスのディアレンジの出現で、他社の光学機器メーカーも、レンジファインダー付のライフルスコープを販売するとお客様から聞いています。
他社が、このレティクルとレーザーの連動やブレットドロップ・コンペンセーターまで、簡単に真似する事ができるのでしょうか?とても楽しみです。

ディアレンジは、 3 倍から 12 倍までのズームです。おまけに対物レンズは 56mm と大きなものを採用しています。したがって重量は、マウントも含めると 1kg 以上にもなってしまいます。
マグナム口径のライフル銃で、機関部が軽合金などで出来ているライフル銃などに取り付けると、反動によってマウントベースを取り付けているネジ穴が、簡単にねじ切れてしまう可能性があります。
もし、このディアレンジを取り付けるのであれば、サコーなどしっかりしたベースタイプのアリ溝が切ってある銃に取り付ける事を、オススメを致します。

サコー M75 に取り付けたディアレンジ


私も実際に、機関部が軽合金で出来ている軽い銃に重いスコープをつけて、マウントベース取り付けネジが反動に耐え切れず、スコープをマウントベースごとふっ飛ばしてしまった銃を、何回か見た事があります。
高価なスコープを取り付けても、それに耐えられる銃でないと、銃の損傷だけでなく吹っ飛ばしたスコープまで壊してしまう事になるかも知れません。
このディアレンジを取り付ける銃の耐久性を考えてから、実際に銃に取り付けて頂きたいと思います。

猟場などで実際に銃を持ち運ぶ際には、大切なスコープが雨や雪そして砂埃などに塗れてしまうと思います。
そんな時には必ず、付属品のスコープカバーをかけて持ち運んで下さい。
多少のクッションが入っていますので、少しくらいの衝撃ならスコープカバーが、ダメージから保護をしてくれます。

ツアイスオリジナル・スコープカバー


今回入荷いたしました、デイアレンジについているブレットドロップ・コンペンセーターは、シェラの 30Cal 180gr SBT を初速 2800f/s で飛ばすバリスティックデーターで、取り寄せました。
この数値は、 300WSM や 30-06SPG でも使えます。

ブレットドロップ・コンペンセーター付きの価格は、メイト価格で¥ 469,000- です。
納期は約 3 ヶ月位でしょうか。
ブレットドロップ・コンペンセーター無しの価格は、メイト価格で¥ 454,000- です。
このコラムで紹介をしました EAW 社のサコー用マウントの価格は、メイト価格で¥ 35,400-

•  この価格は、今回の入荷分の価格です。
これからのお取り寄せ分の価格につきましては、ユーロ通貨の為替レートにより値上がりする可能性があります。
ディアレンジにブレットドロップ・コンペンセーターを組み込むと、使い勝手は一層よくなります。
しかし弾がターゲットを外してしまったら、もう言い訳は出来ませんね。
高価な商品ですし、レンジファインダーもついておりますので猟期以外の時は、ゴルフなどのレジャーにもお使いになって見てはいかがでしょうか?
あっ、でも一度銃から外してしまうと、いくら精度の高い EAW 社のマウントと言えど、念の為またスコープ合わせを行わないといけないですね。



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