#097 ('10/06/10)

IWA 2010 報告 新製品紹介 後編

写真をクリックすると、拡大写真がご覧になれます。(一部対象外)

諸事情により、後編のアップが遅くなり、誠に申し訳御座いませんでした。
楽しみにしていたお客様には、大変ご迷惑をお掛けしました。

それでは後編は、狩猟銃関係やその他についてご報告をさせて頂きます。



【H&N】
競技銃用空気銃ペレットはもとより、ここ数年は狩猟用などに使われるハイパワーエア・ライフル用ペレットも好評な、H&N社の缶の蓋に施されている印刷のデザインが、一新されました。
缶の印刷だけでなく、缶の蓋にも一工夫されています。


缶の蓋


写真では解り難いと思いますが蓋の内側に突起を作り、缶本体の窪みにはまり込み、不用意に缶の蓋が開かない構造になっております。

缶のデザインだけでなく、ハイパワーエア・ライフル用ペレットにも新しいラインナップが、追加されておりますが、残念ながらまだテスト販売とのことでφ4.5mmのペレット弾のみの販売だそうです。
φ5.5mmの販売はしばらく先になりそうですが、楽しみに待ちたいと思います。
それでは当店で人気の高い、バラクーダシリーズにて例を挙げてご報告をさせて頂きます。

・バラクーダ“Power”


バラクーダ Power


“Power”は、柔らかい鉛製のペレット弾の表面に銅コーティングを施すことで、ペレット弾の表面は鉛製より20%ほど硬化されているそうです。
硬化させることにより、ペレット弾の変形を抑える事が出来るので、輸送中の振動等による変形や傷が少なくなり、安定した命中精度が得られると思います。
またターゲットにヒットした際もペレット弾の変形が少なくなるため、貫通力も高くなります。
従来のバラクーダより、ペレット重量は少しだけ軽くなります。

・バラクーダ“Green”


バラクーダ Green


見た目は普通の鉛弾の様に見えますが“Green”は、レッドフリー(非鉛)・ペレットです。
エア・ライフル用ペレットにもレッドフリーの時代が来るのでしょうか?時代を先取りしたペレットだと思います。
北海道での鴨撃ち等を、楽しめそうですね。
素材は、特殊な錫合金で出来ており、従来のバラクーダよりペレット重量は軽くなります。

・バラクーダ“Hunter”


バラクーダ Hunter゙


“Hunter”は、バラクーダの先端部に穴を開けることにより、マッシュルーム効果が大きくなります。
狙うターゲットにより、使い分けていただければ?と思います。
ペレットの先端部に穴が開いている関係上、従来のバラクーダより、ペレット重量は少し軽くなります。

ハイパワーエア・ライフルを使用する方にとっては、ペレット重量が重要な要素になると思いますので、簡単に比較できるようにしましょう。
・バラクーダ Match  φ4.5mm : 0.69g 10.65gr
・バラクーダ Power  φ4.5mm : 0.66g 10.19gr
・バラクーダ Green  φ4.5mm : 0.42g 6.48gr
・バラクーダ Hunter  φ4.5mm : 0.67g 10.34gr

昨年のIWA報告において、H&N社の新製品“ラビットマグナムU”を記載したところ、過去に“ラビットマグナム”が存在したことを教えてくれたお客様がいらっしゃいました。
本当に有難う御座いました。この場を借りて、お礼申し上げます。



【アンシュッツ】
さて競技銃メーカーの老舗であるアンシュッツ社が何故、狩猟銃関係を主に題材を置いた後編に登場するのか、疑問にお持ちの方も多いと思います。
私自身も前編に掲載するか、後編に掲載するかで迷いましたが、題材の少ない後編にて紹介することにさせて頂きました。

今年のアンシュッツ社新製品は、なんとハンティング・ライフルです。
以前からアンシュッツ社では、222Remや22ロングライフルの弾を使うハンティング・ライフルは、販売されておりました。
しかしこれらのライフルはどちらかと言うと、ホビーシューティング向けに作られた意味合いが大きかったと思いますが、今回のセンターファイヤー・ライフルは、本格的なボルト式ハンティング・ライフルです。
モデル番号は1780です。


アンシュッツ 1780 ハンティング・ライフル


口径は一般的な308Win、30‐06SPGの他にドイツなどのヨーロッパ諸国では比較的ポピュラーな8×57IS(8mmモーゼル)や9.3×62(30‐06SPGのネックアップ)も用意されています。
ボルトは60度開閉の6枚ロッキングラグを採用し、頑丈に作られております。


ボルト


弾倉は着脱式の4発マガジンで弾倉の入れ替えが容易に行えます。


マガジン


私が一番、気に入ったのはトリガーです。
トリガーは勿論アンシュッツ社製のトリガーが付いています。
トリガーのモデルは5780Dアジャスタブル・シングルステージトリガーです。


5780Dトリガー

アンシュッツ社は競技銃が専門なだけに、切れ味が抜群なだけでなく、好みに応じて切れ味やトリガーウェイトを調整する事まで出来ます。
トリガーウェイトは600gから1800gまでの重さ調整が可能で、トリガーシューも前後に動かせますので指の短い日本人には、嬉しい限りです。

ストック形状は“クラシック”“モンテカルロ”“ジャーマン”と3種類の形状が用意されておりますが、やはり日本人には左右のどちらでも使用できる“クラシック”タイプが馴染みやすいと思います。
私は、ハンティング・ライフルのストック形状について、あまり詳しくないので、アンシュッツ社のカタログを見て勉強しましたので、皆様にもご紹介させて頂きたいと思います。

先ずはクラシックストックです。


クラシックストック


一般的なアメリカンストックです。

次にモンテカルロストックです。


モンテカルロストック


モナコ公室が、好んで使ったストックのスタイルなので、モンテカルロと呼ばれているのでしょうか?

最後にジャーマンストックです。


ジャーマンストック


いかにもドイツの銃らしいシルエットです。
しかしこのジャーマンストックには、チークピースが二種類あるみたいです。

・ジャーマンチークピース


ジャーマンチークピース

頬付け部が丸く盛り上がっているのが、特徴です。

・ババーリアンチークピース


ババーリアンチークピース

私はモーゼル66Sがこのババーリアンチークピースを使っていたことを、記憶しています。
ちなみにババーリアは英語で、ドイツ語ですとバイエルンとなります。
この記事を書きながらその昔、ファインベルクバウ300Sのストックにチロリアンストックと呼ばれていた、曲線がきれいで特徴的な形状のストックがあったのを思い出しました。


チロリアンストック(過去に当店で販売した中古品)


過去に当店のホームページで、中古品として掲載した写真が残っておりました。

余談ですが、アンシュッツ社のカタログには、チェッカリング(木部に刻まれた滑り止め)のことをドイツ語で“Fischhaut”「魚のうろこ」と表記しています。
魚が嫌いな私にとっては、ちょっと気持ち悪い表現ですね。



【シュミット&ベンダー】
いつも大人気のシュミット&ベンダー社は、最終日にようやくブース内に落ち着いて入ることが出来ました。
PMUシリーズはずっと納期が長く、いったん品切れになると次の納期がまったく読めず、お客様へご迷惑をお掛けすることが多かったシリーズです。
しかし今やPMUシリーズは、シュミット&ベンダー社の稼ぎ頭になっているようです。
したがってシュミット&ベンダー社では、スタッフを増やし生産ラインを増やしたため、納期も多少短くなったようです。

IWA速報の、ブログにも写真を掲載してもらったライフルスコープが、今回のIWAで私の一番気になった新製品になります。


5-25×56 PMU/LP/MTC/LT


5-25×56 PMU/LP/MTC/LTの本体の表面のデザートカラーは、セラミックコーティングされているそうです。
他のモデルでもこのデザートカラーが欲しいと思いますが、残念ながらこのモデル5-25×56 PMU/LP/MTC/LTにしかありません。
早ければ今年の秋頃に、1本だけ入荷する予定です。


5-25×56 PMU/LP/MTC/LT


昨年のIWA2009報告で、3-12×50 PMU/LPのUSMCモデルで「エレベーションクリックはダブルターンではない」と報告したところ「MTCのエレベーションクリックも、ダブルターンですよ」と、とあるマニアの方から指摘されましたので、今回はちゃんと、エレベーションクリックを回してダブルターンかどうか?をIWAの会場で確認をしてきました。


MTCクリックのダブルターン


2回転目になると、エレベーションクリックの中央部が、ちゃんと上に出てきます。
これで簡単に、目視確認が出来ます。

シュミット&ベンダー社とのミーティングも終わりのんびりと、展示されている5-25×56 PMU/LP/MTC/LTの写真を撮影しながら、ライフルスコープを覗き込むと、なんだか見たことの無いレティクルが目に入ってくるではありませんか!!
思わずレティクルの写真を、撮影してきました。


H‐37レティクル


写真をクリックすると写真を拡大して見る事が出来ます。
すると左下に“H‐37”と表記されているのを、確認することが出来ると思います。
このレティクルが“H‐37”というレティクルで、詳細は解りませんがUSMCモデルのGen2レティクルと同様に何処からか?レティクルの供給を受けているそうです。

ライフルスコープのレティクルを写真撮影するのは、かなり面倒な作業です。
何枚も写真を撮り直ししていると、シュミット&ベンダー社のスタッフが「このレティクルは、追加料金を払えばライフルスコープに組み込んで、出荷する事が可能ですよ」と、教えてくれました。
長い納期と追加料金が掛かってしまいますが、どなたかチャレンジしてみませんか?
ハンティングや競技射撃などへの実用性はまったく無いレティクルですが、マニア心をくすぐるちょっと気になるアイテムです。



【Sauvestre】
フランスのレッドフリー弾専門メーカーで今回、初めてブースを訪ねてきました。
フランス語なので、いったいなんて発音すれば良いのか…ソ−ヴストルとでもしておきましょう。
私はてっきりこのソーヴストルは、同じフランスの銅弾メーカー“GPA”と関係のある会社かと思いましたが、全く関係ない会社でした。
ソーヴストルの商品ラインナップは、散弾銃用サボット弾とライフル銃用レッドフリー弾で、弾頭のみの販売だけでなく工場装弾も販売しております。
ソーヴストルのサブタイトル“BALLE FLECHE”は直訳すると「矢のような弾」でしょうか?その様なイメージを持って、ご覧いただければと思います。





◎散弾銃用サボット弾 “BALLE FLECHE SAUVESTRE”  BFS
私の専門外の不得意分野ですが、簡単に説明させていただきます。
鉛弾とレッドフリー弾の二種類が用意されているようです。


BFS plomb


BFS sans plomb

“BALLE FLECHE”の名のとおり、弾頭のお尻には羽根は付いていて、スラッグ弾の弱点である直進安定性を追求し、100m程度の射程距離があると思われます。
チョーク付き銃身やライフルドバレルにも使える、サボット弾のようです。

レッドフリー弾は下の写真のように、大きなマッシュルーミング効果が期待できます。


BFS sans plombのマッシュルーミング


◎ ライフル用レッドフリー弾 “FLECHE INTERNE PORTEE” FIP
ビッグゲームハンティング用に開発された、2種類の鉛を含まない金属で構成されている、レッドフリー弾です。
弾頭の先端はホローポイントになっていて、ターゲットにヒットした際に弾頭のジャケットがマッシュルーミング効果を引き起こします。
その際に、弾頭の中心部で芯になっている二つの金属が放出され、矢の如くターゲットを貫きます。


FLECHE INTERNE PORTEEの断面

この効果により、破壊力と貫通力の相反するパワーを、一つの弾頭に組み込んだビッグゲームハンティング用弾頭になっております。

・FIP BATTUE (ショートレンジ用)
270〜458口径で、外見は本当に“GPA”にそっくりです。


FIP BATTUE

35口径や8mm口径なども含め小口径は除き、多種類の口径のバリエーションがあります。

・FIP APROCHE (ロングレンジ用)
270Cal,7mm,30Calの3種類のみになります。


FIP APROCHE

バーンズのXブレッツの様にスマートな形状をしているので、300m以上のロングレンジにも対応できます。

“GPA”はターゲットにヒットした際、弾頭先端部のノーズが4つに割れ、残った後方のボディーがターゲットを貫通する構造になっております。
したがって大きなターゲットに対し、いささかストッピングパワーに欠ける嫌いがあったようです。
しかしこの“FLECHE INTERNE PORTEE” FIP レッドフリー弾は、ビッグゲームハンティング用に開発されている為、大きなマッシュルーミング効果を発揮するので、ストッピングパワーに期待をしたいところです。
弾頭内部に入っている2つの芯が、ターゲットにヒットした際の獲物に対するダメージを、どのように与えるのか?また弾の命中精度を、どこまで上げることが出来るのか?非常に楽しみであります。

それにしても相当、手の込んでいる弾頭と思われますですので、もちろん価格も高価になってしまいます。
確か弾頭は1箱、77発入り? 実包は1箱16発入り??と話していたような気がします。
なぜ切りの良い数字でパッキングできないのか?と、不思議に思います。
これがフランスの文化なのでしょうか?



【カール・ツアイス】
言わずと知れた、世界最高峰の光学機器メーカーです。
カール・ツアイス社からも新製品のドットサイト(コンパクトポイント)と、レーザーレンジファインダーが発表されておりました。
既に日本国内販売での販売も、開始されているようです。

・コンパクトポイント


コンパクトポイント


その名の通り、コンパクトなドットサイトです。
コンパクトポイントの下側のレールは、ウェーバーレールになっておりますので、ウェーバーレールのスコープベースが既に取り付けられている銃には、簡単に取り付け可能です。

・レーザーレンジファインダー


レーザーレンジファインダー


単眼鏡になり、従来の双眼タイプのレンジファインダーより、コンパクトになりました。
モードを切り替える事により、6通りの弾道補正値が、視野内に表示されます。



【その他】
ヘンゾルトのライフルスコープなど、面白い商品を展示しているブースを覗くと、これまた興味深い装置が発表されていました。
大きなブレットドロップコンペンセーターです。


ブレットドロップコンペンセーター


まだ開発途中の品物だそうです。
画面には338Lapuaと表示されていますが、338Lapua Magで撃ったら一発でこの大きなブレットドロップコンペンセーターが、吹っ飛んでしまわないか?と疑問に思うのは、私だけでしょうか?

横から見ると、ライフルスコープの上下クリックに連動しているので、使用弾やライフルスコープのクリックの数値を入力すれば、自動的に画面に数値が出てくるのでは?と思います。


横から見たブレットドロップコンペンセーター


それにしても横幅が広すぎて、ブレットドロップコンペンセーターを外さないと、ガンケースに収納できないし、持ち運びに不便ですよね。

通常のライフルスコープに、ドットサイトを取り付けるための、面白いマウントリングがありました。
スコープリングにウェーバーレール(ピカティニー)が切ってあります。


ドットサイト用マウントリング


ライフルスコープとドットサイトを上手く使いこなすことができれば、猟場で出会った一瞬の獲物に対しても、瞬時に対応できるのでは?と思います。


会場内を歩いていると「おやっ?」と思うポスターを発見しました。

・マーチ


マーチのポスター


これって日本のマーチかな?と思いながら写真を撮ってきたところ、やはりあの日本のマーチでした。
ブースはアメリカの会社かな?と思ったところ、そこはドイツの会社のブースでした。


展示されているマーチ


マーチの噂にはよく耳にしていましたが、実際にマーチを手に取って覗いた事はありませんので、コメントは控えさせていただきます。
ブースに置いてあった英語版のカタログと見比べたところ、ほぼ全種類のスコープがブースに置いていたでしょうか?
せっかくなので英語版のカタログを2部頂戴し、日本の販売元に1冊、進呈させていただきました。
しかしカタログには、どこにも“Made in Japan”の文字が入っていません。
もしやと思いながら販売元に確認をした所、間違いなく日本製とのことで安心しました。


あまり射撃には関係の無い写真も数枚ほど撮ってきましたので、掲載させていただきます。

・鷹
鷹は毎日、会場の外の広場でショーを行い、終わると会場の端のブースで鷹は、羽を休めていました。


休憩中の鷹


しかしIWAも最終日となると、会場内を営業しています。


鷹匠と鷹


お願いをすると、鷹と記念写真を撮らせてもらえます。


鷹と記念撮影


鷹の居るところは人だかりが激しく、近づき難かったのですが頑張って、他人の記念撮影の写真を撮ってきました。

・剥製
昨年も写真撮影したウサギの剥製に、子ウサギが加わっていました。


ウサギの剥製


ここのブースの人たちは、こんな子ウサギまで食べているのか…?

・ゲーム機
レーシングカーに乗って、レーシングゲームを楽しむイベントが行われていました。


レーシングカー


おなじみのアンシュッツやRWS、そしてベレッタなどがスポンサーになっています。

・エアソフトガンメーカー
ディスプレーが面白かったので、写真撮影を行いました。


エアソフトガンメーカーのディスプレー


チェコのメーカーのようです。

・土曜日の夜
毎年恒例の、クルト・チューネ氏及びスタッフとの懇親会をニュルンベルク・メッセ内にある、パーティー会場で行います。
今年のパーティー会場は、なんだかとんでもない所に、連れて行かれました。
エスカレーターでどんどん上まで登っていきます。


パーティー会場


高所恐怖症の私にとっては、まともに下を見る事が出来ませんでした。

このパーティー会場では、25ユーロの入場料を支払えば、飲み放題食べ放題です。
お徳だと思いますが、この飲み放題が私にとっては厄介です。
気が付けばテーブルの上に、ビールジョッキが並んでいて、飲み干さないとチューネ氏に怒られてしまいます。
私はいつもチューネ氏に気が付かれないよう、ビールはそこそこに、いつも水ばかり飲んでおります。


クルト・チューネ氏とスタッフ


左から秘書のカトリさん、チューネ氏、ドイツ代理店のターニャさん、そしてブリンクさん。
チューネ氏とブリンクさんの着ているポロシャツは、クルトの新製品でスタッフのユニフォームになっていました。
しかしみなさん元気です、深夜まで盛り上がっていました。

・ニュルンベルク・メッセの工事
昨年からずっと工事をしております。
U-Bahn(地下鉄)のメッセ駅から会場入り口まで、屋根を取り付ける工事みたいです。


メッセの工事


日本なら1年も掛からずに工事が終わると思うのですが、ドイツ人もなかなかのんびりしていますね。
この分だと来年もきっと、仮設の会場入り口まで遠回りをさせられそうです。

長くなりましたが、これでIWA2010報告を終わりとさせていただきます。
有難う御座いました。





K

 
2003-2005 (C) GINZA GUN LIMITED. ALL Rights Reserved.