前編では競技用ライフル銃を製作している銃器メーカーを中心に、報告させていただきました。
中編では射撃用品の製作をしているメーカーを中心に、ご紹介させていただきたいと思います。
【セントラ&MEC】
本当にセントラ社とMEC社の新製品は、使用方法が年々難解になっていきますので、このIWA報告でレポートを書くのも一苦労です。
理解しにくい点もあると思いますが、ご了承ください。
・MEC CONTACT W
ますます複雑な形状に進化した、エアライフル用バットプレートです。
MEC CONTACT W
カタログ上では、MEC CONTACT Vが159ユーロ、そしてこのWが295ユーロで約2倍の価格になっています。
でも「部品をちょっと動かしてみようかな?」とネジ等を動かしてみると、各部品に回り止め等の細かい部品が組み込まれておりますので、色々と動かしてみるとその作り込みの良さが十分、伝わってくると思います。
MEC CONTACT Wを横から見たところ
角度を変えて撮影した写真です。
拡大して見ていただければ、どこがどの様に動くのか、ご理解いただけると思います。
・ デュプレックス
すみません、実は・・・この商品は昨年の新製品だったのです。
現物が手元に無く、使用方法の説明で悩んでしまった商品なので、あえて昨年度は紹介をしませんでしたが、実際に輸入してリアサイトに取り付けて、標的を狙ってみると初めてこの商品の良さを理解することが出来ました。
スパイサイトに取り付けられたデュプレックス(SPY SHORT“ID”)
写真はスパイサイトのフロントチューブに、デュプレックスが取り付けられています。
デュプレックスの前には、デュプレックスインサート(フロントサイトのインサートリングみたいなもの)を取り付けます。
そしてリアサイトを覗くと、ピープ穴とフロントサイトの間にもう一個リングが入り、エイミングの精度を更に向上させる商品です。
デュプレックスを取り付けたときのイメージ
実際に、リアサイトに取り付けて見てもらえれば一目瞭然なのですが、遠方のお客様も多いため、なかなかご来店いただき、実際にご自身の目で見て確認していただくことが出来ません。
そこで写真撮影を試みましたが、内部のリングの写真がうまく撮れません。カタログを撮影しましたが、この図でわかりますか?
エイミングの精度を向上させるのが、この商品の一番の利点ですが、私もそろそろ老眼鏡が必要な年齢になってきたのでようやく、標的が見えない方の苦労が少しずつではありますが、理解できるようになって来ました。
そこで老眼等でお困りの方にも、この商品をおすすめしたいと思います。
老眼でピープ穴の輪郭がはっきり見えなくて困っている方は、ピープ穴の周囲に目の焦点を持っていき、その後フロントサイトや標的に焦点を動かすと目の筋力を使いすぎ、すぐに目の疲労が溜まってしまいます。
すると競技の後半には、まったく目が見えなくなってしまう可能性が大きくなります。
そこでデュプレックスを使い、ピープ穴に変わるデュプレックスインサートのリングをピープ穴の前方に持ってくることで、目の焦点を合わせ易くなり、目の疲労が軽減されると言う訳です。
目の良い方でもチークピースの頬圧の若干の狂いで、エイミングが自然にずれてくる事の多い選手には、朗報だと思います。
デュプレックスとデュプレックスインサートをただ単に取り付けるだけでは、同心円が取れませんのでデュプレックス本体のクリックを動かし、デュプレックスインサートとフロントサイトの同心円を作ります。
そしてここから、一番難しい問題が発生します。
ピープ穴からデュプレックスインサートの距離、ピープ穴からフロントサイトの距離、フロントサイトの大きさ等でデュプレックスの前に取り付けるデュプレックスインサートのリング径が、変わってきてしまうのです。
デュプレックスインサートのリング径はφ3.8〜φ4.2まで、5種類が用意されています。
このサイズの選択が非常に難しく、実際にご自身が使用している銃に取り付けて、エイミングを行ってみないと適切なサイズが判断できないのです。
このデュプレックス、スパイサイトにはそのまま取り付け可能ですが、その他のリアサイトにはレンズフードUを購入しないと取り付けが出来ません。
以前のレンズフードUは、取り付け可能なリアサイトの種類がほとんどありませんでしたが、今年のセントラ社のカタログには、ほとんど全てのリアサイト用のレンズフードUが販売されていますので早速、発注を掛けさせていただきました。
私も是非、購入して使ってみたいのでヘンメリーリアサイト用のレンズフードUが入荷するのを、首を長くして待っております。
またデュプレックスインサートの前には、カラーフィルターのLENSや専用のポラリゾンフィルターを、ねじ込むことも可能になります。
使い方さえ理解できれば、いろいろと使用方法のアイデアが広がってくる商品になります。
しかし販売側もしっかりと理解していないと、お客様に対して何も説明できない商品になってしまいます。
しっかり勉強しておきます。
この商品は、セントラ社では絶大な自信を持って、販売をしているように感じました。
デュプレックス関連の細かい部品の使用方法を理解が難しいようであれば、セントラ社ではSPY SHORT“ID”等のセット販売(写真:スパイサイトに取り付けられたデュプレックス)も行っておりますので、このセットで購入すればあまり悩まずにご使用できるのでは、と思います。
セット内容はスパイ リアサイト、タイニー アイピース、デュプレックス、デュプレックスインサートになります。
・ スコアー HR
スコアー HR
スコアープラスに似た商品で、フロントサイトの高さにスペーサーを入れることにより、12mm〜26mmまでの間、1mmずつ高さを変えることが出来ます。
フロントサイトチューブ下のベース部分の足が細いため、フロントサイトリングがすっきりと見る事が出来ます。
【クルト・チューネ】
クルト・チューネ氏は、一昨年の千葉国体の時に来日する予定でしたが、所用で実現することが出来ませんでした。
来年は東京国体(埼玉県長瀞射撃場での開催)なので「是非とも来日するように」と強く伝えておきました。
来日が実現すれば、平成10年度のかながわゆめ国体以来となります。
・ X.9 ハイブリッド
昨年末のウィンターセールから販売を開始した、シンサティック素材とコットンキャンバスを織り込んだ、ハイブリッドキャンバス地を使用したX.9ジャケット&パンツです。
X.9 ハイブリッドプロキャンバス
数年間ほど流行ったプラスチック素材に替わり、シンサティック素材を編みこんだキャンバスジャケットを、どこのメーカーでも作るようになりました。
クルト社のハイブリッドキャンバスは、横糸にシンサティック素材、縦糸にコットン素材でキャンバス地を編みこんでいるそうです。
クルト社が言うにはハイブリットキャンバスの耐久性は3年、通常のキャンバス地の耐久性は2年との事です。
私のクルトは既に10年以上使用しておりますが、練習量が減ったこともありますが、レザージャケットなのでまだまだ使えそうです。
ヨーロッパのトップクラスの選手でも、新素材のハイブリットキャンバスは、まだ様子を伺っている選手が多いようで、全ての選手がハイブリッドキャンバスを購入するのではなく、通常のコットンキャンバス地のX.9プロキャンバスを選択する選手がいまだに多いそうです。
・ X.9シューティングブーツ
写真のシューズはまだプロトタイプだとか。今後、つま先部のデザインを変更する予定だそうです。
X.9シューティングブーツ
ISSF2013のルールに適応しております。
かかとの部分がシンサティック素材になっています。
この部分は少し弾力性があるのでニーリングの姿勢をとった時に、トップグリップラバーがシンサティック素材に食い込み、動き難くなるのでは?と思います。
・ X.9バイザー
X.9バイザー
MEC社の製品ですが、X.9とクルトのロゴ入りです。
赤と黒のリバーシブルなので目立つこと、間違いなしです。
それはそうと後ろのポスター、気が付きましたか?
ソーニャ・プァイルシフター選手が、ワルサーのKK300アルテックを構えています。
・ 新品ジャケットのスティッフネス
クルト社から、新品ジャケットのスティッフネスについてアドバイスを貰いましたので、参考までにお知らせします。
ちなみにスティッフネスゲージは、タウバー社の物で計測した値です。
X.9プロキャンバス =約1.7mm
X.9ハイブリッドキャンバス =約2.4mm
もうみなさん、既にご存知と思いますが、ISSFルールでは3.0mmを越えないと試合では使用できません。
この値は新品のキャンバス地での数値ですし、日本とヨーロッパでは湿度も違いますので、数値には誤差も生じると思います。
新品のジャケットは、使い込んで柔らかくしてからでないとISSFルールに適応しませんので、ご注意ください。
【ゲーマン】
ゲーマンと言えばやはり、昨年のIWA2011でようやく販売が開始された、560 スーパーフィルターAOSマイクロサイトでしょう。
良く売れているには事実なのですが、本当にこの商品は「良く見えるのか見えないのか?」、個人差が大きすぎて「良いのか悪いのか?」まったく判断の付かない商品なのです。
当方も販売する時に、お客様に自信を持って紹介できない商品なので、我々も困惑しております。
ちなみに私も銃に取り付けて標的を狙ってみましたが、私の場合はハレーションを起こしたみたいに真っ白になって、はっきりとは見えませんでした。
IWAでのミーティングの席でゲーマン社に「付けても見えないという苦情が多い」と伝えたところ、やはりドイツでも同じだったそうです。
そこでゲーマン社が研究した結果、サイトライン(ピープ穴からフロントサイトまで)の距離によって見え方が違ってくるという事が、解ったそうです。
・ 561 スーパーフィルター AOS マイクロサイト
561マイクロサイト
題名に気がつきましたか?品番が560ではなく561になっております。
561は560のロングバージョンだという、説明を受けました。
昨年から販売をしている従来の560は、サイトベースラインの長さ(フロントサイトからリアサイトのピープまでの距離)が760mm前後の距離で使用して欲しいとの事でした。
したがって、長いマズルエクステンションチューブを銃口部に取り付けている方は、マズルエクステンションチューブを外してみて下さい。
新しい品番の561はマズルエクステンションチューブを使用して、サイトベースラインの長さが800mm以上になった場合にのみ、使用するとマイクロサイトの効果が出るそうです。
このサイトベースラインの距離に注意していただければ、少しは見やすくなるかな?と思います。
またマイクロサイトを購入されて「とってもよく見えた!」というお客様からのアドバイスです。
1. メガネを使用している方は、メガネを外して必ず裸眼で見てください。
2. 射撃姿勢をとり、銃を構えてからリアサイトのピープ穴を覗いてください。
リアサイトを前後させ、良く見える位置を探して下さい。
3. ピープ穴を最初は大きくして覗き、少しずつ絞り込んでいきながらよく見えるピープ穴径を探して下さい。
以上の3点を試していただければ、効果が出てくるのでは?という事でした。
もし560を購入されて「これは使えないな」と思い、箪笥の奥にしまい込んでいる方がいらっしゃいましたら、是非とも試してみてください。
最後に。
写真を見て、気が付きましたか?561本体とネジの間が、一段細くなっています。
この段のおかげで今までは取り付けが出来なかった、アンシュッツ7002リアサイトやオブザーバーリアサイトにも、取り付けが出来るようになりました。もちろん新しい560にも同じように、段が出来ております。
【サワー】
アクセサリーがほとんど無い、ピストルシューター向けの嬉しいアイテムがありました。
・ ピストルレスト
ピストルレスト
ライフル射撃にはシューティングスタンドという、競技中にちょっと一休みする際に使うアイテムがありますが、ピストル射撃には今までありませんでした。横向きに使えば依託射撃用のレストにもなります。
荷物の少ないピストルシューターにとっては少々かさばる商品になりますが、快適な射撃を行うことが出来ると思います。
・ フレックス シューズ
世界でもまだ、計測機械が十分に準備されていないそうですが、近いうちにシューズのソールが曲がりやすくならないといけなくなるそうです。
フレックス シューズ
ソールのつま先から1/3位の所に、青いパーツが入っています。このパーツが柔らかい素材で、ソールを曲げやすくしました。
新しいソールのシューズ名称は、ライフル用は“パーフェクトスタイルU フレックス”、ピストル用は“イージースタイルU フレックス”になります。
当店ではまだ、新しいソールのシューズの出荷準備は整っておりませんが、順次フレックスに切り替わっていくと思います。
・ バイザー
バイザー
MEC社やahg社のバイザーと違い、固めのバイザーです。
色は黒のみとなります。
・ アイシールド
アイシールド
単なるヘッドバンド用のアイシールドです。
今までは白か黒またはグレーしかないアイシールドでしたが、サワー社ではグリーンのアイシールドを販売開始しました。
グリーンは目に優しい色と言う事で、サワー社では良く売れているそうです。
【コラミ】
数年前から輸入を開始して、今や当店でも一番人気で評判のシューズです。
コラミ社のシューズも、新しいモデルが出ておりました。
ピストルシューズ
色は黒を基調としてパイピングと靴紐を赤にしました。
またシューズの横にベンチレーションの穴を開け、通気性を良くしたそうです。
ライフルシューズ
つま先の、甲の部分のデザインを変更したそうです。
コラミ社もサワー社と同じく、ソール部を曲がりやすく変更しました。
ソールの溝
ソール部分には、溝が4本入っています。
この溝は荒っぽいですが、電動ノコギリを使い切れ目を入れているそうです。
溝を入れる目安として、靴紐を掛ける一番先端側の位置に、一番前の溝を入れているとの事です。
ジグさえ作れれば、簡単に溝を入れることが出来そうですので、靴底の硬いシューズを持っている方は、電動ノコギリで溝を入れれば簡単に新ルールに適合したシューズに改良できると思います。
我々の対応をしてくれたアルディ氏は長友選手が在籍する、イタリアのサッカーチーム、インテルの大ファンだそうで「前モデルのシューズカラーはインテルカラーだ」と言っていました。ちなみにもう一人のスタッフがACミランの大ファンだそうで「ニューモデルはACミランカラー」だそうです。 コラミ社の所在地はスイスなのですが、イタリア語圏なのでセリエAの方が、人気があるのでしょうか?
当店のセールのカタログを見せたところ、どうもサワー社に対してライバル心を持っているようで、いろいろと厳しい意見を言われました。ドイツ国内ではサワーとコラミはほぼ、同価格で販売しているそうなのです。
価格の差は、スイスフラン対ユーロ、日本円対ユーロの為替の関係があると思うので、仕方が無いことだと思うのですが。
またサワー社のシューズより、セールに掲載している写真が小さいことを指摘されました。
「サワーのシューズと同じ価格にしてサワーの2倍、写真を大きくしろ!」と…。
【コルンオプティック】
プラスチックインサートやピストルのロータリーサイトを製造し、販売を行っているメーカーです。
・ リアサイト PRO LUX 12
写真はプロトタイプですが、ちょっと高価なスイス製のリアサイトです。
リアサイト PRO LUX 12
1クリックの移動量は10m=0.31mm 50m=1.56mm 100m=3.12mm になります。
基本構造はセントラ社のPRO57と一緒で、左斜め下から強力なスプリングで押仕上げられている構造になります。
アンシュッツ社のリアサイト7002と同様に、本体を傾けることが出来るようになりまた。
フロントチューブには、ハイエンドM22等が取り付けられるようネジが切ってありますので、工夫次第で色々と楽しめるリアサイトではないか?と思います。
ちょっと重めのリアサイトですが質感があり、手に持っただけで高品質感が十分に伝わってきます。
IWA2012 新製品紹介 後編へつづく。
K
|