昨年の「IWA報告 新製品紹介編」中編で報告させていただきました、サコー社の新製品であるM-85 ボルトアクションライフルの一部が入荷してきましたので、ご報告させて頂きます。
サコーM-75とM-85
機関部の外見は、ちょっと見ただけではM-75とM-85、ほとんど何も変わっていませんよね。
しかしモデル名が変わった以上は、必ず大きな変更点があるはずです。
ではどこが、どの様に変わっているかは、昨年度のコラム #059( ' 06/03/20) を参考に併せてご覧頂ければと思います。
昨年度のコラムでは、ただ漠然とIWAの会場で写真を撮ってきただけなので、わかり難い点があったと思います。
今回のコラムでは、ご理解いただき易いようM-75とM-85を、実際に並べて写真を撮りましたので、見比べて見てみましょう。
しかし当店在庫の関係上、M-75とM-85で同一のモデルが準備できませんでした。
M-75は、シンサティックストック付きのフィンライトで、口径は30-06SPGのM(ミディアム)アクションです。
サコーM-75 フィンライト
M-85はラミネートストック付きのハンターで、口径は300WSMのSM(ショートマグナム)アクションです。
サコーM-85 ハンター
バレルドアクションは、共にステンレスモデルではありますが口径が違うため、アクションの長さが違い単純に比較の対象になり難い点があると思いますが、ご了承下さい。
余談ですが、サコー社は昔からのアクションの名称を、使わなくなりました。
昔ながらの呼び名に慣れ親しんでいる方に、簡単に比較説明をさせて頂きます。
☆ビクセン |
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XSアクション(222Rem等) 2007年度の新製品 |
☆フォレスター |
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Sアクション(308Win等) |
☆ファインベアー |
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Mアクション(30-06SPG等) |
☆ファインベアー(Mag) |
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Lアクション(Mag 口径) 2007年度の新製品 |
この他に新しい口径のWSM用に、SMアクションが追加されました。
今後、発表される予定?の338Lapua Mag用のアクションは、LMアクションになる予定です。
【ストックの形状】
チークピースの形が変わっているのがわかると思います。
手前側がM-85のチークピース
反動を真後ろに受け易くするよう、頬付けが上側に盛り上がっているモンテカルロスタイルから、ストレート型に変更されています。
真横から見るとシルエットはストレートですが、ちゃんと頬付け部は横に盛り上がっています。
サコー社ではこれを「シャドーライン・チークピース」と呼び、クラシックなデザインを意識したようですね。
この変更に伴いバットプレートの位置が、M-75と比べるとM-85の方が25mm程、高くなっています。
反動で発生するマズルジャンプを軽減させて、二の矢を撃ち易くしたのでしょう。
【リコイルラグ】
M-75では、機関部の下にダイレクトに取り付けてあるリコイルラグの板を、M-85では取り外しています。
その替わりにM-85では、ストックの内側に金属プレートをネジで取り付け、リコイルラグとしております。
下側がM-85のリコイルラグ
この変更の意味は不明確ですが、サコー社では「軽く、頑丈にした」と言っています。
リコイルラグの形状を変更する事で、ストックにかかる負荷を軽減させているのかも知れません。
【ボルト後部】
ボルトの後部のデザインをする事により、ボルトの動きがスムーズになり、速いボルト動作を行っても正確に作動させる事ができるようになっています。
手前側がM-85のボルト後部
丸型から角型になり、キーロックも取り外され、昔のデザインに戻りました。
【ボルトヘッド】
これが一番の改良点ですね。
M-75のボルトヘッドと見比べると、M-85のボルトヘッドは下部分が削り取られています。
手前側がM-85のボルトヘッド
これは、ボルト操作を行って薬室に弾を装填しようとしたが、思いとどまって装填を取り止める際、ボルトを完全に閉鎖しなくても、ボルトを後退させるだけで排莢ができます。
これは弾倉から弾が上がってきた段階で、薬莢のリムがエキストラクターの爪に引っ掛かるからです。
薬室に実砲を残したまま、次弾を装填させようとして、プライマーを叩き暴発させてしまう事故を防ぐための改良点です。
また、ボルトヘッド下部分がカットされている事で、ボルト操作で実砲を薬室に送り込む際、実砲のリムの当たる部分が平面になるため、弾の引っ掛かりも少なくなりスムーズに装填ができる事でしょう。
【フィード】
ボルトヘッドのデザイン変更に伴い、フィード部の形状も変更されております。
右側がM-85のフィード
フィード部の横幅が、広くなっているのがわかりますか?
サコーのマガジンは、弾を2列にジグザグ入れるスタッガードカーラムなので、これでチャンバーへの弾の送り込みが、弾倉内の左からでも右からでもスムーズになる事でしょう。
【マガシン】
マガジンの形状は良く見ると、変更されている点があります。
手前側がM-85のマガジン
M-75とM-85のアクションの長さが違うため、実際に兼用できるかどうかの、装着のテストができませんでしたが、マガジン側面の板金加工がなくなっていますので、M-75とM-85のマガジンを兼用することは、出来ないと思います。
【マガジンキャッチャー】
これも重要な変更点です。
レミントンM700やステイヤー・マンリッヒャーのデタッチャブルマガジンは、マガジンキャッチャーを左右から挟みつけるタイプですが、サコーM-75のマガジンはマガジンの前方に一ヶ所しか、マガジンキャッチャーがありません。
手前側がM-85のマガジンキャッチャー
このマガジンキャッチャーは、ハンティング時のとっさの動きで、マガジンキャッチャーに指や手袋を引っ掛けたり、衣服を引っ掛けたりしてマガジンが脱落するトラブルが起きたのでしょう。
そこでマガジンキャッチレバーを押しても、マガジンが外せないように工夫がしてあります。
このシステムをサコー社では「トータル コントロール ラッチ」と呼び、特許出願中だそうです。
【ベディングスクリュー】
マイナスのヘッドから、トルクスのヘッドに変更されております。
下側がM-85のベディングスクリュー
トルクスのヘッドは、マイナスや通常の6角のヘッドよりヘッド部分を潰し難いですが、逆に力が入り過ぎてしまうので、ネジの締めすぎには注意しましょう。
もちろんトルクスのレンチは、銃に付属しております。
【トリガー】
セーフティーの形状こそ変わっていますが、本体その物の変更点は無いようです。
手前側がM-85のトリガー
※トリガーウェイトの調整はマガジンを外し、マガジンウォールから調整をする事ができます。
トリガーウェイトの調整ネジ
とは言っても、6角レンチを差し込み難いので、ストックを外してから調整した方が、無難だと思います。
2.5mmの6角レンチで、調整することが出来ます。
トリガーウェイトの調整ネジに六角レンチを差し込んだところ
この機能はM-75と、まったく同じ物です。
大きな変更点は、この位でしょうか?
とにかく新しいM-85アクションは、機関部とボルトの改良に力を入れたみたいです。
当店ではこの新しいサコーM-85を現在、わずか2丁だけを在庫しております。
口径はこのコラムのモデルになっていただいた300WSM(SMアクション)と308Win(Sアクション)です。
【サコーM-85 ハンター ラミネーテッド ステンレスのテクニカルデータ】
★300WSM
銃身長:61.5cm
全長:112.2cm
重量:3.38kg
マガジンキャパシティー:4発
銃身ツイスト:1-11 ' ツイスト
トリガーウェイト:1.5kg(1〜2kgまで調整可能)※
★308Win
銃身長:56.0cm
全長:107.1cm
重量:3.38kg
マガジンキャパシティー:5発
銃身ツイスト:1-11 ' ツイスト
トリガーウェイト:1.5kg(1〜2kgまで調整可能)※
価格はともにメイト価格で¥340,000-です。
そろそろ世界中に、サコー・M-85も出回ってきたようなので、もしご希望の機種がありましたら、ご用命下さい。
頑張って急いで、受注輸入をいたします。
今からなら今年の猟期には、まだまだ十分に間に合うと思います。
K
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