#092 ('09/04/09)

IWA2009  報告 新製品紹介 後編

写真をクリックすると、拡大写真がご覧になれます。

前編では主に、競技用エアライフルとスモールボアライフルを中心に、ご報告させて頂きましたが、後編はそれ以外の物についてご報告をさせて頂きます。
私の不得意分野でもありますので、そこは突っ込まずに読み流して頂ければ幸いです。



【ステイヤー・スポーツワッフェン】
前編では、エアピストルのみをご紹介させていただきましたが、実はハイパワー・エアライフルの LG-110 でも新製品が出ておりましたので、この後編にてご報告をさせて頂きます。


LG-110 HP  ハンティング


すみません、写真がボケています。
このディスプレーされた銃は、クルクルと回転していたので、なかなか良いシャッターチャンスに恵まれず、この様な写真しか撮ることが出来ませんでした。

新型の LG-110 HP は、サムホール型ストックが高級感を漂わせる、クルミストックになりました。
チークピースとバットプレートが競技銃と同様に、上下に可動できる様になったので、ライフルスコープでターゲットを狙うとき、瞬時の照準もかなり楽になると思います。
従来のモデルの黒いストックは、安っぽい木に黒く塗装しただけの物なので、ぶつければすぐに塗料が剥げてしまう難点がありました。
しかしクルミストックですと、たとえキズを付けてしまったとしても、サンドペーパー等で簡単に磨きをかけてオイルフィニッシュする事が出来ますので、実際に山の中を歩き回るハンターの方にオススメできると思います。
クルミストックはなにより、持った時の質感が違うのが最大の特徴です。



【ナモ・ラプア】
昨年度は、スモールボアライフルの実包がリニューアルされ脚光を浴びておりましたが、今年は大きな変化がありません。


ラプアのブース


ただ最近、ラプア社が出しているマイナーな薬莢が、ごく少数の方たちの間で話題になっている様ですね、特に『アメリカ好きな人たち』の間で、です。
その口径は 6.5Grendel と 6.5-284 の 2 種類なのです。

私もラプア社のカタログには以前から出ていたので、存在こそは知っていましたが、一体何に使うのかな?と、最近になって興味が湧いてきました。
6.5-284 はちょっと考えれば、 284Winchester のネックダウンと直ぐに理解できるのですが、 6.5Grendel は一体何なの?と首を傾げていました。
薬莢の形状を見る限り、どうも 6mmPPC のネックアップの様ですね。


薬莢のディスプレー


そもそも 6.5mm などという口径は、当店でもハンティングに使う方など殆んど皆無で、実際にシェラの弾頭でも競技用のマッチキングしか、輸入しておりません。
その昔、豊和工業で生産されていた競技銃で、 6.5mm アリサカの口径を採用した銃があり、それを大切に使っている方が弾頭を購入するか、もしくはダミーカートリッジ用として弾頭を購入される方が、殆んどでした。
ラプア社では 6.5mm の弾頭で FMJBT (フルメタルジャケット・ボートテール)も販売していますので、もちろん当店でも在庫を置いていますが、これもダミーカートリッジを作る方たちの間では秘かに人気がある弾頭なのです。

話がそれましたがこの 6.5Grendel と 6.5-284 について、ラプア社のスタッフに話を聞いてみました。
すると殆んどがアメリカ向けで、アメリカン・ハンドローダーの間で人気が高まっているそうです。
使用目的は主に、ターゲットシューティングだそうです。
6.5Grendel は 300m くらいまでのショートレンジ向け、 6.5-284 はそれ以上のミドルレンジ向けの薬莢だそうです。
まぁ簡単に説明が終わってしまったので、スタッフもあまり興味が無いのかな?と思いながら、ホテルに戻りカタログを開いて見ると、ユーザーズコメントとしてあのベンチレスト射撃界の神様、トニー・ボイヤー氏が写真入で紹介されていました。
きっとトニー・ボイヤー氏が使い始めて、アメリカ中のベンチレスト射撃界に広がったのでは?などと、勝手な想像を働かせております。
もしかしたら米国で行われているベンチレスト競技は、 6mm から 6,5mm に口径が変わる時代がやってくるのでしょうか?



【ルアグ・アモテック】
あの RWS ブランドを販売している、大きなカートリッジメーカーです。
もう一昨年も前の話になりますが、 IWA2007 のコラムで RWS のスーパーフィールドをご紹介させて頂きました。
なかなか入荷せず、待ちに待ってようやく昨年末に入荷したスーパーフィールドは、ホームページのみでご紹介をさせて頂いたところ、無事にサンプル入荷分もほぼ完売するほどのご好評をいただき、本当に有難う御座いました。


RWS スーパーフィールド


今年はスーパーフィールドも、ようやく正式にメーカーのカタログにも掲載され、本格的に販売を開始されたようです。
現在は在庫が殆んど無くなってしまったので、次回の夏のセールには何とか間に合わせたい(間に合わない可能性大です)と思いますので、まだ試されていない方はご迷惑をお掛け致しますが、もうしばらくお待ち下さい。



【ポリテルモ】
これは、ライフル銃やけん銃の弾丸を受け止める、ブレットトラップです。

表面の白い板状の樹脂は、簡単に弾頭を貫通させます。
白い板状の樹脂を貫通した弾頭は、箱の中に入っている小さな白い粒状の樹脂チップによって、弾頭の推進力を完全にストップさせる抵抗となり、弾頭をほぼ原型を留めた状態で回収できるという、新しいスタイルの弾頭回収装置です。


ポリテルモ


表面の白い板状の樹脂は、弾頭が貫通しても大きな穴が開かないので、箱の中の樹脂チップは、弾頭の貫通した穴から何発撃っても、こぼれ出さないという特徴があります。
ただ何百発も同じ所に撃ち続けると、穴が開いてしまうそうですが、バーナーなどで炙れば簡単に穴を補修することが出来るそうです。

このポリテルモは既に、日本の射撃場に設置されているメイトン社のスモールボアライフル用電子標的に、装備されています。
ここ最近は特に、鉛問題が大きく取り上げられ、なおかつ射撃場が閉鎖される事態も多く発生されています。
したがって「こんな弾頭回収装置がありますよ」という事を、射撃関係者の方たちの記憶に留めて置いて頂きたいと思い、ご紹介をさせて頂きました。


大小のポリテルモ


この上の小さな物は、スモールボアライフル専用の大きさです。
下の大きい方は、この程度の大きさでも 308Winchester くらいなら、容易に弾頭をストップさせてしまうそうです。
貫通力の高い徹甲弾はもちろんの事、至近距離でサブマシンガンをフルオートでぶっ放しても、まったく問題なく弾頭を回収できるそうなので、海外では自動銃やサブマシンガン等の発射(回転)テスト等に多く使われているようです。
50BMG を連射したら、いったいどうなりますかね?



【シェラ】
いつもはカタログだけ貰って、特に話をする訳ではないシェラ社のブースですが、今年のカタログを見ると思わぬところに「 NEW 」のマークが入っていました。
それは 30Cal 155gr HPBT Palma の所でした。
でも、よくよくカタログを見ると、 30Cal 155gr HPBT が 2 種類あるんですよね。
更に品番を確認すると、従来の Palma の品番が #2155 ですがそこには Palma の表示が無くなり、新しい品番の #2156 の所に「 NEW 」のマークと Palma の名称が表示されておりました。

新しい #2156 Palma のサンプルを一発のみ頂きましたので、 #2155 と比較してみましょう。


#2155 と #2156


・ 30Cal 155gr HPBT #2155  の全長 :28.9mm
・ 30Cal 155gr HPBT Palma #2156  の全長 :30.3mm

新しい #2156 の方が、全長が 1.4mm ほど長くなっています。
これは弾頭が飛行中に空気抵抗を極力少なくさせるため、弾頭の先端をより尖らせた結果だと思います。
写真では判断し難いと思いますが、先端に開いているホローポイントの穴も、実際には小さくなっています。


#2155 と #2156 を上から見たところ


同じ重量で細長くなった弾頭は、弾道係数が伸びて当たる弾頭になったと思われがちですが、実は大きな弱点も出てしまいます。
この弱点は、弾頭と銃身内部が接触する弾頭のボディー部分、いわゆるベアリングサーフェースの面積が、極端に狭くなった事を意味しています。
ベアリングサーフェースの面積が狭くなると、一体どの様な事が起きるのか?を、ご説明させて頂きます。
もし薬莢の軸と弾頭の軸が曲がって弾頭が薬莢に取り付けられているとします。
このまま発射された弾頭は、銃身軸と弾頭の軸がずれたまま銃身内を通過し、銃口から発射されます。
するとどうなるかは、皆さん容易にご理解いただけると思います。
ベアリングサーフェースの面積が大きければ大きいほど、軸がずれて発射された弾頭でも、銃身内部を通過する過程で弾頭の軸がある程度、矯正されてしまうそうです。
したがって雑に弾を作られる方は、 30Cal 155gr HPBT #2155 をチョイスした方が、安定した実包を作ることが出来ると思います。

では 30Cal 155gr HPBT Palma #2156  は良くない弾頭なのか?と言う事になりますが、決して良くない弾頭ではありません。
ただ単に、薬莢の軸線と弾頭の軸線が狂っていない実包を、作り上げれば良いだけの事です。とは言っても、そこが一番難しいところですよね。
当店で人気のある、アモテスター等を使って弾頭の軸線を矯正していただければ、比較的簡単に当たる弾を作ることが可能だと思います。
アモテスターの使用方法なども記載しておりますので、もし宜しければ過去の射撃コラムをもう一度、ご覧になっていただければ幸いです。

#024 ('04/06/03) アモテスター

#026 ('04/09/30) 大口径クラブ対抗戦 参加報告


当店でもその昔はバーガーブレットで、 VLD と LTB の二種類を輸入しておりましたが、多くのお客様から「 LTB の方が良く当たる」と言われましたので、現在は VLD の輸入を中止しております。
シェラの 30Cal 155gr HPBT でもきっと、これと同じ様な事が、起きるかも知れませんね。
ちなみに LTB は今、 BT に名称変更になっております。



【シュミット&ベンダー】
納期の長いシュミット & ベンダー社の PM- Uシリーズは、当店でも人気のあるライフルスコープです。
当店でも十分な在庫が置ければ良いのですが、高価なためなかなか大量な在庫を置くことが出来ません。
したがって、すぐにでも欲しいとおっしゃるお客様にはいつも、ご迷惑をお掛けしております。


PM-U  5-25 × 56LP


このPM-U5-25×56LPは倍率が高く設定できますので、当店でも一番人気です。
写真にはオプションの、ラバーアイシェードが取り付けられていますが、あまり格好の良い物ではありませんね。
でもこの PM- U  5-25 × 56LP には、あまりみなさんに知られていない事実があるのです。
実はこのライフルスコープはなんと、 10m からパララックスを合わせる事が出来るライフルスコープなのです。
実際にハンティングや標的射撃にお使いの方は「それがどうしたの?」と疑問に思われる方が多いと思いますが、エアライフルの世界ではこの 10m という近距離で焦点が合うことが、非常に大切なのです。
10m で焦点の合うライフルスコープは、基本的に倍率の低い物か、エアソフトガン用に作られた安い物位しかなく、お客様からの問い合わせの返答に困っていたこともありました。
よってこの PM- U  5-25 × 56LP を「エアライフルに使って下さい!」と言いたい所ですが、銃本体よりはるかにスコープの方が高価になってしまいますね。

毎年、このスコープを眺めながら「これが欲しいなぁ」と思いつつ、懲りもせず毎年同じ写真を撮影してきます。


PM- U  3-12 × 50LP USMC モデル


でもカメラを向けると「あれっ?」と思う事を発見しました。
エレベーションクリックが、ダブルターンになっていないのです。


PM- U  3-12 × 50LP USMC モデルのクリック


確か以前は、エレベーションクリックには、ダブルターンが付いていた様な気がしたのですが、やっぱり一昨年の IWA 報告を見るとダブルターンになっていました。
USMC ではダブルターンを使用する事に対して、何か問題でも起きたのでしょうか?


PM- U  12-50 × 56


いやいやこのモデルも、昨年のショットショーと IWA で紹介され、世界的に注目を浴びたスコープだと思いますが、なかなかメーカーより出荷されません。
どうも、何かトラブルがあったそうです。
当店でもなかなか入荷しないため、長期に渡ってお待ちのお客様に、大変ご迷惑をお掛けしております。
この場を借りて、お詫び申し上げます。
実はまだ、出荷予定が …



【ライカ】
当店では今のところ、全く取り扱う予定がありませんので、あえて解説はいたしませんので、写真だけご覧になって下さい。


ライカのライフルスコープ


あのカメラマニアにはたまらない、超有名光学機器メーカーのライカ社から、ライフルスコープが販売されました。
まだまだ、とりあえず発表した段階のようで、 2 機種のみの展示でした。
もし日本で販売が開始されるなら、もしかしてあの銀座の中古カメラ屋さんが輸入元になるのでしょうか?



【 H&N 】
最近の当店では、競技用空気銃弾よりハイパワー・エアライフル用のバラクーダの方に注目を集めている、空気銃弾を専門に扱っているメーカーです。
IWA の会場でのディスプレーは、毎年楽しみに写真を撮ってきます。
ただの鉛の粒が、綺麗にディスプレーされていると、まるで宝石の様に輝いて見えます。
と言うのは建前で、よくよく観察していると思わぬ弾が、展示されている事があるからです。

実は一昨年、面白い弾を見つけサンプルを頂いた弾があったので、取り扱いを考えたのですが、弾が軽すぎて当たらなかったという経緯で、取り扱いを諦めた弾がありました。
参考のために一昨年前の古い写真ですが、ご紹介をさせて頂きます。


カッパーポイント


カッパーポイントを、探し出せましたか?
このカッパーポイントという弾は、鉛の弾に銅メッキを施した物です。
銅メッキを施す事により、弾の表面が硬化して強力なハイパワー・エアライフルでも弾が変形せずに当たるのでは?と思っていました。
しかし軽すぎる事が大きな弱点で、試して頂いた方のお話によると、着弾が全くまとまらなかったそうです。
この弾はもともと、とある外国のショップからの依頼で、 H&N 社が特別生産した弾だそうです。
したがって、もし欲しいと言われても特別生産のため、膨大な数をまとめて購入しないといけません。
よって当店では今後も一切、販売をする予定がありませんので、予めご了承下さい。

今年もまた、 H&N 社のディスプレーをまじまじと観察して見つけた弾は、この弾です。
実は私が以前から、こんな弾が H&N 社から出ればいいのになぁ?と思っていた弾なのです。
その弾の名前はラビットマグナムUです。
名前のとおりウサギ撃ち用のペレット弾です。


ラビットマグナムU


では何故、こんなペレット弾が欲しかったか?と言うと、パワーのあり余るハイパワー・エアライフルでダイアボロ弾(鼓弾)を撃つと、どうしても肉厚の薄いスカート部が空気圧に耐えられず、変形してしまいます。
このラビットマグナムUの様に、スカート部の肉厚が厚ければ、空気圧で変形する心配が無く命中精度が落ちないかな?と、思ったからです。

でも名称がラビットマグナムUとは … 以前はTがあったんですかね?
私ももうこの業界に 20 年おりますが、ラビットなんて弾があった事を全く知りません。
もし、ラビットマグナムなんて弾があった事をご存知の方は、こっそり私に教えて下さい。


ラビットマグナムUのパッケージ


さて私も気になる、このラビットマグナムUのご説明をさせて頂きます。
このペレット弾は、バラクーダより更に重いペレット弾で、パワーの強いハイパワー・エアライフルでしか使うことが出来ません。
写真を拡大してご覧いただければ、蓋に印刷された文字が確認できると思います。
φ 4.5mm は 20J ( 15ft-lbs )以上、φ 5,5mm は 25J ( 18.5ft-lbs )以上のパワーが必要となります。
当店で販売しているステイヤー LG-110 ハイパワーは、口径φ 4.5mm で 24J ( 19.0ft-lbs )、φ 5,5mm は 40J ( 29.5ft-lbs )のパワーがありますので、問題なくラビットマグナムUを発射することが出来ます。

ラビットマグナムUの重量はφ 4.5mm が 1.02g ( 15.74gr) 、φ 5,5mm は 1.6g ( 24.70gr )にもなります。
バラクーダでさえφ 4.5mm が 0.69g ( 10.65gr) 、φ 5,5mm は 1.37g ( 21.14gr )の重量しかないので、いかにラビットマグナムUが重いかをご理解いただけると思います。

ラビットマグナムUだけの写真では、ハッキリしない部分もあると思いますので、 H&N 社のバラクーダマッチと RWS 社のスーパーフィールドを一緒に並べて写真を撮りましたので、参考にしていただければと思います。


ラビットマグナムUとの比較


左からラビットマグナムU、バラクーダマッチ、スーパーフィールドになります。
今回の IWA で頂いた、ラビットマグナムUのサンプルはφ 5,5mm のみだったので、写真のペレット弾は全てがφ 5,5mm になります。
弾の全長は左から 8.6mm 8.5mm 7.5mm となっております。
ラビットマグナムUの先端が一番尖っているので、弾道係数も高くなるはずです。

このラビットマグナムUは、φ 4.5mm とφ 5,5mm の双方を IWA の会場でオーダーして来ましたので、そう遠くない未来に入荷するのでは?と思います。
何とか夏のセールには、間に合って欲しいものです。
でも心配な点が … このラビットマグナムU、 RWS のスーパーフィールドの様に、なかなか入荷しないなんて事になったら、ちょっとガッカリですね。


それではこれにて、 IWA2009 新製品紹介を終了させて頂きます。
有難う御座いました。





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