#053('05/12/09)

ブライカー オリジナルウッドストック

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皆さん大変お待たせいたしました。久々の「射撃コラム」です。
最近は「射撃コラム」より、ブログの方がどうも人気がある様で、それになかなか良いネタが見つからなかったので「射撃コラム」を書くのに、ちょっと躊躇していました。

ブライカーチャレンジャーウッドストック右面


ブライカーチャレンジャーウッドストック左面


私が入荷の日を、首を長くして待っていたのは、今年の3月に行われたIWAガンショーの後「ブライカー社」を訪問した際に、社長のH・ブライカー氏から見せて頂いた、プロトタイプのブライカー社オリジナルのウッドストックでした。
拝見させて頂いたその場でオーダーしたにもかかわらず、約8ヶ月もの納期がかかりしかも、日本に到着して通関後、当店に配達されるまで一週間弱も待たされたのでした。

待ちに待ったブライカーライフルの梱包を開けると、なんとストックがシルバーに塗装されています。
確か現地ではブライカーカラーの「ブルー」でオーダーしたはずなのに…
おまけにフックバットプレートも、ブライカー社オリジナルの物で頼んだはずなのに一丁は、MECフリーポジションが付いているではないですか。
でもまあ、ブライカー社では良くあることです。
バットプレートは交換すれば済む事ですし、色はブルーよりむしろシルバーの方が、なんかカッコいい様な気さえしてきます。
なにより皆さんお待ちかねの冬のセールの写真撮影に間に合ったのが、私は一番嬉しかったです。

当店では、22口径スモールボアライフル「チャレンジャー」と、6mmノルマBR「センターファイヤーライフル」の2種類を、一丁ずつを入手する事が出来ました。
一丁ずつの入荷ですし、今回の納期が約8ヶ月もかかった事を考えると、もしこのオリジナル・ウッドストック付きブライカーライフルを誰よりも早く入手したいと思われる方は、このコラムを読んだ後すぐにでも在庫の有無を、お問い合わせを頂ければ、もしくはオーダーを頂ければ、すぐにでも発注をかけたいと思います。
もしご来店いただけるのであれば、実際にご自分の目で見て、触ってみてください。
どんなに優れた銃でも持ってみて、触ってみて「この銃なら当たりそう」と思わない限りその銃で当てることは困難だと思います。持ってみて「う〜ん」と思うなら、購入を見送った方がいいでしょう。
ちなみに私は、このオリジナル・ウッドストック付きブライカーライフルを持ってみて、久々に「この銃なら当たる」と思った程のいいバランスを持った銃でした。
私もお金さえあれば、お客さんを差し置いてすぐにでも買いたいところですが、もうしばらく我慢します。
でも我慢している間に、どんどんヘタクソになって行くのも隠せない事実なので、まだ周りの選手に相手にされている内にゲットする事を目標に、仕事を頑張りたいと思います。

スモールボアライフル「チャレンジャー」と大口径の「センターファイヤーライフル」は、以前の「射撃コラム」でも「機関部の特徴」を詳しく紹介しておりますので、今回はオリジナル・ウッドストックのみに焦点を当て、ご紹介させて頂きたいと思います。

過去の4回掲載のブライカー社に関する「射撃コラム」を併せて、ご覧いただければと思います。
#020(‘04/05/03) ブライカー社 訪問記
#021(‘04/05/11) ブライカー・チャレンジャーライフル 
#028(‘04/11/06) ブライカー センターファイヤーライフル
#041(‘05/04/06) IWA2005報告 ブライカー社訪問編


ブライカー社では以前から銃を販売する際、他社の製作をしているストックを購入し、そのストックにブライカーアクションを無理やり乗せていたと言う感じで、ボルトハンドルの入る切り込みの位置が合っていなかったり、グリップとトリガー位置が微妙にずれていて「ちょっと撃ちにくい」との声を頂いておりました。
唯一ブライカーライフルに、上手くマッチングさせたストック「シュミットストック」が在りましたが、このストックは機関部をストックにベディング(固定)させるのでは無く、銃身部2箇所をくわえ、ストックにベディングさせるかなり特殊な方法を採用していた為、ユーザーの方達からちょっと敬遠されていた所もありました。
(シュミットストックに付いては最後に、少しご説明をさせて頂きます)

ブライカー氏やブライカー社のスタッフであるマーセル・ベルゲ氏は、ここ数年の主流であるアルミストックの反動の硬さが「いまひとつ気に入らない」との事でした。
その為ブライカーライフルを、反動の柔らかいウッドストックに乗せるには、アンシュッツ社2013用のクルミストックしか選択肢が無かったのにも関わらず、このクルミストックもアンシュッツ社では生産中止を決め、今後の入手が不可能になってしまったのです。
こんな経緯からブライカー社では、「なら、機関部に上手くマッチングできる、反動の柔らかいウッドストックを自分で作ってしまえ」とブライカー社オリジナルのウッドストックを製作し販売を開始いたしました。

ストックにはカラーリングが施されていますので、どんな木材が使われているかは見た目では判断できないと思いますがブライカー社では、ウッドストックの材質にクルミ材より強度の強い、カナディアンメイプル材を選択しています。



「オリジナル・ウッドストック」の特徴

@ストック下部に入っているアルミ製の補強板

ストックの補強板


通常のウッドストックですと倒したり落としたりした際、木目の角度や落とした角度によっては簡単に、ストックにひび割れが起きたり折れたりします。
(アンシュッツ社のアルミストックは、アルミなのに鋳物で出来ていますので、いとも簡単に折れてしまいますし、折ってしまうと修理不可能なので厄介です)
また夏場は湿度が高く、冬場は乾燥している日本の気候では、長年の湿度の高低の繰り返しで木部が反りを起こしてしまいます。
木部が反りを起こすと、機関部とストックを密着させないといけない大切なベディング面に歪みが発生して、安定した反動を得る事が出来なくなってしまうだけでなく、命中精度まで損なってしまいます。
アルミ製の補強版はフォアエンド部には厚みのあるスリングレールとして、またベディング面の下からグリップの後方まで入っていますのでストックの折れを防ぐだけでなく、長年の使用で湾曲してしまう木材を、常に真っ直ぐ保つ効果があります。
ちなみにベンチレストシューティングの世界では、「フライヤー*」が発生する原因の50%以上が、このベディング面の歪みによって発生する着弾点の乱れだと、昔から言われております。
残りの大半が気象条件。弾の不良の原因は、ほんの数%でしかないのです。

*フライヤー:ベンチレストシューティングやマシンレスト等で、小さなグルーピングが出来ているのに、時々大きく外れる弾が出ること。


A6本のベディングスクリュー

ベディングスクリュー



機関部全体を均一に、ストックにフィットさせる効果があります。
通常のライフル銃では2本、多くてもアンシュッツ20シリーズで4本しかありません。
6本はちょっと多すぎの様な気もしますが、現在販売されている競技用スモールボアライフル銃では、機関部の後端部にまで、ベディングスクリューの入っている銃はほとんどありません。
機関部の後端部は無視されがちな所ですが、意外と振動が起きやすい場所なのです。
例えばトリガーが落ちた瞬間です。
シアが外れ、ボルトのファイヤーリングピンがスプリングによって押し出され、雷管をたたきます。
この行程でいくつもの部品が、瞬時に作動します。この時に発生する振動を、ベディングスクリューで機関部とストックを押さえつける事により、ウッドストックの吸収力によって振動を、最大限に吸収してしまうのです。
ベディングスクリューが6本もあるので、ベディングスクリューの締め付けトルクは、通常の銃より軽くていいと思います。
通常アルミストックは7kg以下、ウッドストックなら5kg以下が良いのでは?と言われております。ブライカー オリジナルウッドストックの場合は4kg以下でも良いのでは?と思います。
あまり強く締め付けると、6本もあるのでベディング面の木部を、必要以上に押しつぶしてしまう可能性がありますのでご注意ください。

Bアナトミカルグリップ

グリップを外したところ


グリップのサイズはS・M・Lの3種類から、選ぶ事が出来ます。
前後移動の他には、下方向からグリップを固定しているネジを軸に回転運動しか出来ませんが、現在のアルミストックに採用されている「動き過ぎるグリップ」よりかは、はるかに使いこなしやすいでしょう。
グリップを固定しているネジは、グリップを外しても抜けない親切設計です。
また、ストック下部に入っているストックの補強版の切り込みに、グリップがしっかりとはまり込む為、射撃中にグリップが動いてしまう心配もありません。

Cチークピース

チークピース


チークピースは、とてもコンパクトに作られ素材は、樹脂を使っている様です。
チークピースの可動は上下、左右の動きのみでいたってシンプルですが、射撃中に六角レンチを使って高さを微調整できる所がよく考えられています。
このチークピースは、ボルト脱着の際にチークピースとボルトがぶつかってしまいますので、いちいちチークピースを取り外さないといけない所が難点です。
チークピースの下には、ストックの補強板を固定するネジが見えます。

Dスーパーグリップ・ラバーバットプレート

スーパーグリップ・ラバーバットプレート


昔ながらのゴムラバー付きバットプレートで、厚さ15mmのゴムラバーがスモールボアライフルの反動だけでなく、センターファイヤーライフルの反動をも吸収してしまいます。
ゴムラバーの表面に刻まれた溝により、シューティングジャケットに貼られているゴムラバーに対して強力なグリップ力を生み出します。したがって競技中、肩付けをしているバットプレートの位置がズレてしまうなんて事も、少なくなる事でしょう。
グリップ力が強いので、フック部を外しても十分ご利用になれます。
フック部はネジ2本で簡単に外せますので、3姿勢競技の初心者の方達やエアライフルの選手にもお薦めいたします。
最近のバットプレートは、直線的に上下動する物しかありませんがこのラバーバットプレートの上下動は、一昔前なら一般的だった弧を描く動きです。

スーパーグリップ・ラバーバットプレートの上下動


バットプレートのゴムラバーは3分割されています。
上側のパーツは、伏射時の肩に合わせ角度調整が出来ます。
上下の幅が狭いなんて方には、バットプレートのゴムラバーが3分割されている下側が、下方行に移動することも出来ます。特に立射の時に有効だと思います。
このバットプレートは、残念ながら左右の回転軸の可動が出来ませんので、バットプレートのゴムラバー面は常に標的に対して平行を保っています。
極端な角度を付けて射撃をする方には、ちょっと物足りないバットプレートだと思いますが、最近の銃のバットプレートのセッティングは、ちょっと難しいなんて思われている方には、ピッタリだと思います。
作りは精巧かつ繊細ですが、可動部にいたってはとても単純な動きなのでセッティングも簡単です。どなたでも短時間で使いこなす事が可能になると思います。

分解したスーパーグリップ・ラバーバットプレート



ちなみにゴムラバーは「ミシュラン」という会社で作られています。
あの有名なタイヤメーカーのミシュランを想像する方が多いと思いますが、残念ながらあのミシュランではありません。実はブライカー社のご近所さんのミシュランという会社で製造されたゴムラバーです。


最近のスモールボアライフルのストックは、可動する部分が多すぎて、買い換えても実際に使いこなせるまで、多くの時間とコストがかかってしまいます。
それに鉛問題で、射撃場の閉鎖も全国に広まり、射撃練習をする場所さえ無くなってきている人も多いはずです。
ですから実際に、新しい銃を買い換えたいと思っても「銃を使いこなすまで、セッティングにどのくらい時間がかかるだろう?」と考えると、躊躇してしまうのが現実問題だと思います。
その点ブライカー オリジナルウッドストックは、最新式のストックなのに単純な作りなのでどなたでも短時間で馴染めるストックだと思います。
「どうも最近のゴチャゴチャしている銃には、ちょっと抵抗を感じている」なんて思われている方には、このオリジナル・ウッドストックの出現は朗報だと思います。
こうしてコラムを書いていると、どうしても私が射撃を始めた頃、20年以上前のウッドストックしか無かった時代の、古き良き時代の銃を思い出し、とても懐かしく感じてきます。
お買い換えと考えているなら是非、このオリジナル・ウッドストック付ブライカーライフルをあなたのパートナーとして、お選び下さい。



「シュミット アルミストック」の特徴

シュミットストック付きブライカー チャレンジャーライフル


このシュミットストックが銃身クランプ式のスモールボアライフルだという事は、当店のホームページを昔からご覧の皆様は、既にご存知だと思います。
しかし、このシュミットストックの銃身クランプ式には、ユーザーのお客様からのご指摘があり私も知らなかった、面白い仕組みが組み込まれていたのでご報告させて頂きます。

ではどんな仕組みか?と言うと以前に紹介した射撃コラム「#012 ('04/02/13)アンシュッツ9003《飛ぶようにして》の中に記述しているSoft-LinkR コネクティングシステムを思い出して下さい。
これはストックと機関部の接合部分の間にSoft-LinkRを入れて、機関部で発生するバイブレーションをSoft-LinkRで吸収しストックに伝えないと言う物でした。
実はシュミットストックも同じ構造で設計されていたのです。

銃身をクランプさせる為に付いている、2つの青いブロックの中には、銃身を咥える為に2つずつのOリングが、組み込まれています。

銃身クランプの青いブロック


このOリングだけですと、銃身が前後に動いてしまったり回転してしまったりするので、これらの動きを制御する為に後方(機関部側)の青いブロックと機関部をつなげるプレートがあります。
このプレートは、機関部側はネジで完全に固定しますが、プレートと青いブロックの接続部分にはゴムラバーを使っています。

青いブロックと機関部の接合部



接合部を分解


なので、ストックとバレルドアクションの間には金属と金属の接触が一切無く、ゴムにより保持されている状態になっています。
したがって、シュミットストックは「ブライカー オリジナルウッドストック」より更に、反動が軽いストックだと言う事が出来るでしょう。
ただ、これらゴム部品がどの程度の耐久性があるかは、未だ不明です。
もしゴム部品の耐久性が落ちてきた時は、機関部の後方がストックに当たり反動が出てきますので、はっきりとわかると思います。

機関部とストックの間の隙間


ゴムは人間の肌と同じで、脂分が無くなると表面がカサつき、亀裂が入って来てしまいます。
時々、石油系ではないシリコン系のグリース等を塗ってあげると、ゴムも長持ちするでしょう。
石油系を使うと、逆にゴムの成分が分解されてしまいますので、注意してください。
反動が出てきたら、ゴム部品の交換をお薦めいたします。


 
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